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熊本地震・ふるさとよ

第4部/6 「宝物」が生んだ宝物

増永さんが「宝物」という看護実習生が作ってくれた編み物の道具=熊本県益城町で、福岡賢正撮影

 熊本県益城(ましき)町砥川(とがわ)の飯野仮設団地で暮らす増永道子さん(75)は4年前、筋肉腫で左腕を切断することになった。その手術の前に、毛糸で台所用たわしをたくさん編んで病室に持ち込んだ。

     「手ば切らにゃんなら、もう編まれんて思ちかる、みんなにやりよったつたい。そっで私についた学生さんが、手ば切って1週間ばかししてからインターネットで調べて作ってきてくれたつよ。『おばちゃん、これで編んでみらんね』て」

     そう言って増永さんが白いレジ袋から大事そうに取り出したのは、片手で編めるように、13本の竹箸を円筒形の厚紙に固定して作った手製の道具だった。一面ハートマークが並んだピンクの紙が貼られ、作った人の気持ちが伝わってくる。

     増永さんは今ではこの道具を使わずとも靴下や壁飾り、マスコット人形など大抵のものは編めるが、これでマフラー編みに挑戦したのが全ての始まりだったという。

     「こるば作って来てくれた時ゃ涙ん出た。諦めとったけんな。まだそん学生さんが目にチラチラすっよ。『おばちゃん、おばちゃん』てよおしてくれて。リハビリ行く時ゃ手つないで行きよった。みんな冷やかすけん『おるが娘だもん』て言うちな。だけんこら宝物。絶対手放されんと」

     それが熊本地震で全壊と判定された家の中で行方不明になった。余震が続く中、増永さんは懸命に捜して回り、震災ゴミと一緒に捨てられかけていたのを何とか見つけた。

     「捜しだすとにふてえ目におうた。びっしゃげちしもたばってん、見つけた時はしんからほっとしたばい」

     増永さんは1日の大半を仮設で編み物をして過ごす。2日後に大阪に帰るとあいさつに来た50代のボランティアの男性に、できた作品二つを渡すと、男性は言った。

     「やったあ。これが一番の宝物やで。熊本で増永さんみたいな人におうて、元気もろて。大阪戻ったらバリバリ働いて、またくるよってな」【福岡賢正】=つづく

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