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大統領選に迫る(18)勝敗決めるフロリダ、その最新事情

「第2の故郷」と呼ぶフロリダで繰り返し集会を開く共和党のトランプ候補=米南部フロリダ州ウエスト・パーム・ビーチで10月13日、西田進一郎撮影

 米大統領選挙まで1カ月を切り、民主党のヒラリー・クリントン候補(68)と共和党のドナルド・トランプ候補(70)の選挙運動も全米で約10の激戦州に絞られてきた。政治サイト「リアル・クリア・ポリティクス」の選挙人獲得予測によると、23日時点でクリントン氏は262人を確保する見通しで、当選に必要な過半数270にあと一歩まで迫っている。一方、トランプ氏は126人で、残り150人のほとんどを獲得しなければならない計算だ。

負けられないトランプ氏

 追う立場のトランプ氏が、是が非でも勝たなければならないのが、激戦州の中で最多29人の選挙人が割り当てられている南部フロリダ州だ。1992年以降の過去6回の大統領選で、両党が3勝3敗の五分という「スイング・ステート(勝敗が両党の間で揺れる州)」。共和党に絞れば1928年以降、この州で負け大統領に当選した候補者はいない。死活的に重要なのだ。

共和党トランプ候補の集会に集まった支持者ら。熱狂的な支持者の車も=米南部フロリダ州ウエスト・パーム・ビーチで10月13日、西田進一郎撮影

 トランプ氏は、個人的にも「第2の故郷」と呼ぶフロリダで負けるわけにはいかない。州東部のパームビーチに高級リゾート・クラブ「マ・ラ・ラーゴ」、さらにウエストパームビーチにゴルフ場を持つなど、30年以上にわたって、フロリダに関わり続けてきたからだ。

 3月15日の共和党フロリダ州予備選では、若手のホープで地元選出のマルコ・ルビオ上院議員(45)を、得票率で約20%の大差をつけて「粉砕」し、候補指名争いからの撤退に追い込んだ。しかし、8月末の有権者登録の状況は、民主党38%、共和党36%、無党派24%。共和党支持者を固めるのはもちろん、無党派層も引きつけなければ勝ち目はない。

 「愛するフロリダにいられるのは素晴らしい」。10月13日、ウエストパームビーチの博覧会場でトランプ氏はまず、「フロリダ愛」を示してから語り始めた。

 2005年の女性蔑視のわいせつな発言がワシントン・ポスト紙に暴露され、続いてニューヨーク・タイムズ紙が、トランプ氏に同意もなく体を触られたなどと訴える女性2人の証言を掲載。集会はこうした報道の直後だった。トランプ氏は証言を「完全なうそだ」と否定。メディアはクリントン氏と結びついており、「もはやジャーナリズムではなく、利益団体だ」といらだちをあらわにした。

 さらに、クリントン氏を国務長官時代の私用メール問題を引き合いに「犯罪者だ」などと批判すると、会場を埋め尽くした白人中心の数千人の支持者たちが「彼女を捕まえろ!」の大合唱で応えた。

 支持者たちの熱狂は、昨年から見続けてきた予備選当時の集会と変わらない。「米国を再び偉大に」という選挙スローガン入りの赤い帽子をかぶり、クリントン氏やメディアへの批判が出るたびブーイングを送る一方で、トランプ氏の言葉に拍手喝采を送る。

 集会に来ていたマリベル・コルテスさん(62)は「トランプ氏は唯一の希望だ。米国のために仕事をすると言っているから好き」と熱狂的に支持する理由を語る。イタリア系のゲイル・コングリージョさん(50)は「多くの人がトランプ氏の人格が好きではないことは理解している」と留保しつつも、「みんなが変革を望んでいる」と話した。

 ただ、フロリダでの集会は11日から3日間連続だ。9月に一時リードしていた支持率は、10月に入ってクリントン氏にじわじわ引き離されつつある。選挙戦終盤にきて3日連続でフロリダで演説したのは、強い危機感の現れだ。

急増するプエルトリコ系

 「人種のサラダボウル」と呼ばれるフロリダ。米統計局の2015年推計では、人口2027万人のうち、白人55・3%、中南米系24・5%、黒人16・8%などとなっている。

 近年目立って増えているのが、経済危機や政府の腐敗を背景にした米自治領プエルトリコからの移住者だ。米国籍を持つが、スペイン語を使い、文化面でも中南米系。プエルトリコ系人口は15年足らずで倍増し、14年には100万人を突破した。6年後には、中南米系で長年首位を守っているキューバ系の数を上回るとみられる。

 プエルトリコ系が集中するのは、「ディズニー・ワールド」など観光業の雇用が見込めるオーランドなど州中部だ。中部では、08年からの5年間だけで人口が30万人増えたが、うち中南米系が6割を占めており、その中心がプエルトリコ系だ。

急増する中南米系の住民に投票を呼びかけるプエルトリコ出身のピカさん(左)=米南部フロリダ州オーランドで10月14日、西田進一郎撮影

 「有権者登録はお済みですか?投票の際は何を重視しますか?」。中部オーランドの住宅街を14日、プエルトリコから2年前に移住してきたハビエル・ピカさん(18)が戸別訪問していた。中南米系の政治参加と発言力拡大を目指す無党派の非営利組織「ミ・ファミリア・ボータ」の一員だ。

 タブレット端末を片手に、地図上に記した中南米系住民の家を一日平均60戸訪ねる。スペイン語で有権者登録と投票を呼びかけ、重視する政策を聞く。特定の政党、候補への投票を呼びかける活動ではない。初めての大統領選になるピカさん自身も投票先は決めてない。

 しかし、重視する政策を聞くと、投票先が分かってしまうこともある。ピカさんが訪ねた家の一つで、プエルトリコ系のグリセル・バエズさん(51)は「経済が大事だけど、トランプ氏の中南米系を蔑視する発言は許せないわよ」と応えた。バエズさんはクリントン氏に投票するという。

 中部でクリントン氏陣営で活動しているクリスティーナ・バナハンさん(27)もプエルトリコ出身だ。陣営が集会や催しで中南米系への働きかけをする際の通訳など橋渡し役をしている。感触を聞くと「プエルトリコ系の圧倒的多数は民主党支持だ」と自信を見せる。そのうえで「票が流れる可能性で言えば、カトリック教徒で社会問題で保守的な価値観を持っているプエルトリコ系が、クリントン氏が革新的だと不安に感じる場合だ」と説明した。

 共和党側が狙うのが、まさにこの点だ。党全国委員会でフロリダを担当するニニョ・フェタルボ氏(23)は「中南米系の関心は、移民問題ではなく、教育や経済だ」と語り、移民問題との切り離しを図る。そのうえで、保守的なカトリック教徒が多いことに注目し、大教会を通じた働きかけを強める。

キューバ系の変化

キューバ系米国人たちの集会場「キューバの家」。壁には、1868年の独立戦争と、1961年に在米亡命キューバ人部隊が米中央情報局(CIA)の支援を受けてカストロ革命政権を倒そうとした「ピッグス湾事件」の絵が描かれていた=米南部フロリダ州タンパで10月15日、西田進一郎撮影

 同じ中南米系でも、最大勢力のキューバ系は、1959年のキューバ革命やカストロ独裁から逃れてきた経緯から、「反共産党」色の強い共和党への支持が伝統的に強かった。その支持傾向には変化が見えつつある。

 中部タンパの「キューバの家」では15日、キューバ系住民約20人が州議会選挙の候補者を招いて集会を開いていた。住民らはキューバの混乱を体感したり、そうした親を持つ高齢者たちだ。話題はやはりキューバへの対処方針だった。特に最近は、オバマ大統領がキューバとの関係改善を進めていることから、それへの評価も話題の中心となった。

キューバ系の支持動向の変化について語るエリオ・ミュラーさん=米南部フロリダ州タンパで10月13日、西田進一郎撮影

 71年にキューバからフロリダに来たオスカル・ロドリゲスさん(74)は「最も重要なのはキューバとの関係見直しだ」と語気を強めた。対キューバ制裁の緩和について、貿易や観光でキューバに流れ込むお金は最終的にカストロ政権のものになる仕組みになっていると主張し、「喜ぶのはキューバの人々ではなく、カストロ政権だ」と批判した。無党派だが、歴代の共和党候補に投票してきたというロドリゲスさん。「キューバ系のほとんどはトランプ氏に投票すると思う」と語った。

 ただ、南フロリダ大のスーザン・マクマナス特別教授(69)は「古い世代の関心は共産主義やキューバ問題だが、若い世代は教育や学生ローンなど国内問題だ」と世代間の意識の差を指摘する。

 タンパで20年にわたって民主党の選挙に関わってきたキューバ系のエリオ・ミュラーさん(60)によると、古い世代は家族や親戚、知り合いが住むキューバのことが最優先だったが、若い世代は家族も親戚もフロリダにおり、キューバの人々やキューバの未来を心配する必要がなくなった。世代間で「大きな分断」があり、20年前はキューバ系の支持は「共和65、民主35」だったが、現在は「民主51、共和49」と実感しているという。

接戦必至 近年の得票差は1%

 フロリダでは、2000年大統領選を戦った共和党ジョージ・W・ブッシュ候補と民主党アル・ゴア候補は共に291万票台に達し、わずか537票差でブッシュ候補が勝った。近年でも勝者と敗者の得票率差は▽10年知事選は1・2ポイント▽12年大統領選は0・9ポイント▽14年知事選は1・0ポイント--という大接戦だ。

 フロリダの人口の約3分の2はフロリダ生まれではなく、移住した人たち。その多様で流動的な人種や人口構成に加え、都市と郊外と農村部という地域性も混在していることが、毎回大接戦になる要因という。

 両陣営が「主戦場」と位置づける中部でも、オーランド周辺にはプエルトリコ系が大量に流入する一方、北西約100キロの都市「ザ・ビレッジズ」には、全米の保守的な農村部などからトランプ氏が頼みとする白人退職者の移住が続いている。

 マクマナス特別教授は「両陣営に必要なのは、教育や経済、雇用について語り、勝敗の鍵を握る中南米系を引きつけることだ」と指摘した。

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