毎日新聞が7~9月にかけて実施した「第70回読書世論調査」で、過去の調査でよく読まれたり、戦後ベストセラーになったりした21の文芸作品を挙げ、読んだことがあるかを尋ねたところ、最も多かったのは夏目漱石の「坊っちゃん」(61%)だった。2位はアンネ・フランクの「アンネの日記」(38%)で、ともに作品の一部が教科書に採用された作品が上位を占めた。
年齢別にみると、「坊っちゃん」を読んだことのある人は、最も高い50代で74%に上った。最少の20代でも41%を占めており、各年代を通じて読まれているのが特徴。男女とも6割が読んでいて、国民に広く親しまれている。「読んだことがある」の3位は川端康成の「雪国」(30%)、4位は黒柳徹子の「窓ぎわのトットちゃん」(28%)だった。
「読んだことがある」人の多い作品は、小中学校の教科書で取り上げられてきた。1906年に発表された「坊っちゃん」は小中学生向け国語、「アンネの日記」は52年に日本語版が刊行され、中学生向けの国語や英語の教材に採用。「坊っちゃん」は現在も中学国語の教科書に載っており、国民的文学といえる。
「坊っちゃん」を教科書に掲載している東京書籍は採用理由について「短文を連ねた平易な文体でありながら、語彙(ごい)が豊富でリズム感がよく、言語感覚を高めるのにふさわしい。文化の継承という観点からも、漱石の作品にふれてほしい」と説明している。
調査は、全国の16歳以上の男女3600人を対象に郵送方式で実施。2375人から回答を得た。【浜田和子】