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(89)電気を待つアレッポ

 「電気のある生活を忘れてしまった」「冷暖房はもう長いこと使っていない」。内戦下のシリア北部アレッポの住民たちの言葉だ。アレッポは過去3年間、慢性的な停電に悩まされてきた。政府側と反体制派の激戦が続く今も、双方の支配地域で厳しい電力事情が続いている。

     アレッポでは2012年夏に内戦が本格化し、政府側と反体制派が街を二分してきた。電力の大半は約30キロ東にある発電所から供給されていたが、過激派組織「イスラム国」(IS)の前身組織が13年に発電所を制圧した。ISは電力設備を実効支配地域に移設したり、密売したりするために発電所を解体し、電力供給は途絶えた。

     政府は反体制派と交渉し、南方のハマから予備の供給網を通じて電力を供給するよう働きかけた。アレッポの反体制派支配地域にも電力を供給する条件だったため、話し合いは進展したが、戦闘の激化によってこの計画は頓挫した。

     電力供給が大幅に減少する中、街中には小型の発電機が広まった。アレッポは商業都市で、周辺には工場も集積していた。経営者たちは内戦で稼働できなくなった工場から発電機を持ち出し、高値で売るようになった。反体制派はトルコから大型の発電機を持ち込んだ。政府も稼働中の供給網が十分ではないため、発電機を積極的に活用するようになった。

     だが、発電機だけで電力需要をまかなえるはずはない。今年に入ってロシアと米国の主導で一時停戦が発効した際、政府と反体制派は電力を巡る協議を再開し、双方が電力網を修理することで合意した。しかし一時停戦の崩壊によって、合意は空文化した。政府はハマから政府側支配地域だけを通る供給線の建設を進めているが、ある住民は「支配権がめまぐるしく移る戦況では安定した電力供給は望めない。内戦が続く限り、電力問題も解決しない」と懐疑的だ。

     アレッポの攻防は今やシリア内戦の行方を決定づけるとも言われ、民間人を巻き込んだ激戦が続いている。戦火の中、住民たちは「明日はせめて1日1時間、電気が使えれば」と願う毎日を送っている。【フアード・アリ(毎日新聞シリア通信員)、訳・秋山信一】

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