メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

第1回 女は死なない=室井佑月

=撮影、坂本泰道

 女性誌で取材を受け、よく聞かれることは、

    「室井さんは、女性として幸せに生きていますか」

     というものだったりする。

     この質問、何回くらいされただろう。たぶん、10回、20回なんてもんじゃない。

     じつはあたし、この質問が嫌いだったりする。

    「人として」といわれれば、好きな仕事をしているし、可愛い息子もいるし、幸せかもとすぐに答えられるのに。

     今回、連載をはじめるにあたって、担当編集者(女)と意気投合し、出産・子育てエッセイの次のテーマは『女の生き方』でいきましょうという話になった。

     この際、今まであまり深く考えたくなかったことを、じっくり考えるいい機会だと思った。あたしはなぜ、「女として」といわれるのが嫌なのか?

     だってあたしは、女として生まれ、女であるということを、さんざん利用しまくって生きてきた。

     成人してから様々な仕事をしてみたが、長つづきしたのは、ホステスと物書きとコメンテーターだけ。経歴として書けるものは、ミスコンのタイトルを取ったということと、子どもを産んだくらいのもんである。

     物書きは、デビュー当時、顔出しでエロを書く若い女がいなかったので優遇された。

     ワイドショーのコメンテーターは、奥様向けの番組であるにもかかわらず、男の評論家や司会者が多い。数合わせという意味で、女の出演者が必要だ。つまり、女のコメンテーターは男のコメンテーターと比べると、競争の少ない世界。

     女であることを利用してきた後ろめたさが、「女として」という質問を嫌いにさせるんだろうか?

     いいや、違う。この時代のこの国に生まれたこととおなじくらい、あたしが女であるという事実は変えられないものだ。

     ならばあたしは、この時代のこの国に生まれたことも、女であることも、自然に捉えて活用するのが正しいという考え方だ。

     かといって、あたしがそれらすべてを活用しきって上手いことやったかというと微妙。

     息子や女友達と旅行へ行くと、ちょっと奮発して泊まった高級ホテルで、仲良さそうな夫婦を見かけることがある。レストランでは、当然のように旦那さんがカードを出して支払いをしていたりする。

     友達の指にはめてある指輪は、全部、旦那さんからのプレゼントであるが、あたしの指にはめてある指輪は、すべてあたしがあたしにあげたご褒美だ。

     なのであたしは、女性誌の特集にありそうな『女として成功するためには』とか『~代から輝く』、『セレブを目指す』みたいな話はできないし、するつもりもない。そういった嘘くさい啓蒙本は軽蔑しているし。

     あたしが書ける「女として」という話は、おなじ性である女性が読んでも、男性が読んでも嫌になるくらい、あたしの「ややこしい女である部分」をさらけ出すことだと思う。

     それは……、やるからには任せてください! 

     男友達に以前、いわれた。あたしの書く官能小説は、女の生々しさが満載すぎて、ゲンナリするのだって! 素をさらけ出すエッセイは、もっとリアルに力強く、女の生々しさ満載なものになるでしょう。

     それが、読んでくれる方々にどんな意味があるのかはまだわからない。けれど、書き進めていくうちに、必ずや意味を見出せるような気がしている。

     連載のタイトルは『女は死なない』。しぶとい女の話だ。

     たまに、息子の話をついしてしまうのは、許してください。もっか、やつはあたしのすべてなので。

     それにここだけの話、5年以上、男性から触れてもらっておらず、現在あたしが威張って女であるといえるのは、そこの部分だけだったりする。あたしは父じゃなく母だもの。母=女よ。

     これからしばらく、月に一回、お付き合いいただけたらとても嬉しい。

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

     6月に上梓した子育てエッセー『息子ってヤツは』では、母としてどのように息子を育てるべきか葛藤しつづけた日々を綴った、室井佑月さん。近年は、タレントとして活動しながらシングルマザーとして子育てをしている立場から、教育分野をはじめ日本社会が抱えるさまざまな問題にも鋭い切り口で言及している。母になる以前から、これまでも作家として「女」という生き物を内側からも外側からも見つめてきた彼女がいま、再び語り始める「女」とは――。

    室井佑月

    1970年、青森県生まれ。雑誌モデル、銀座・高級クラブでのホステスなどを経て、1997年に「小説新潮」主催「読者による『性の小説』」に入選し、作家デビュー。小説家、随筆家、タレントとして多岐にわたり活動している。2000年に第一子となる男児を出産。2016年には、一人息子の中学受験と子育てについて愛と葛藤の8年間を赤裸々に綴ったエッセー『息子ってヤツは』(毎日新聞出版)を上梓。主な著書に『熱帯植物園』(新潮社)、『血い花』(集英社)、『子作り爆裂伝』(飛鳥新社)、『ママの神様』(講談社)などがある。

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 八王子スーパー強殺 矢吹恵さん追悼礼拝 発生から22年
    2. 海老蔵さん 長野で植樹 「麻央がつなげてくれたご縁」
    3. 桂ざこばさん 仕事復帰 8分間トーク披露…声詰まらせ
    4. 来週のひよっこ 第18週「大丈夫、きっと」 衝撃の新事実にみね子、心が壊れそうに… 母・美代子は上京を決意
    5. 傷害 飲食店従業員、暴行され死亡 容疑者逮捕 東京・新橋

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです

    [PR]