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社説

パリのテロ1年 自由を脅かす排外の波

 130人の命を奪ったパリの同時多発テロからきょうで1年になる。週末の夜に、食事やコンサートを楽しんでいた市民を無差別に襲ったのは、イスラム過激思想に影響された移民系の若者たちだった。

     世界中を揺るがした事件によって恐怖と憎しみの連鎖が生まれ、社会が分断されてはならない。しかし、その不安がぬぐえない。

     フランスでは、テロへの不安からイスラム系移民を嫌悪する雰囲気が生まれているのではないか。イスラム教徒の女性向けに作られた、肌を露出しない水着「ブルキニ」の着用を禁止する動きが象徴的だ。衛生上の問題が口実にされたが、本当の理由は「テロを連想させる」という非イスラム系住民の反発だった。

     18世紀のフランス革命は、カトリック教会が国家と一体となって人々を支配した旧体制を打破し、政治と宗教を分離した。公共の場に宗教を持ち込まず、信教は個人の自由に委ねるという「世俗主義」が国是となり、市民は解放された。これは「自由、平等、友愛」という革命の精神と共鳴していた。

     それが今、宗教と生活を一体と考えるイスラム教の価値観と衝突している。これまでもイスラム教徒の女性が頭に巻くスカーフの着用が公立学校で禁止され、公共の場では顔を覆うブルカの着用を禁止する法律が制定されてきた。イスラム系住民は「信教の自由」を侵害する差別だと反発したが、認められなかった。

     1年前のテロは、二つの価値観の反目をあおり、分断をさらに先鋭化させてしまったように見える。寛容な社会をもたらすはずの世俗主義の理念が、相いれない異文化を排斥しようとする「不寛容」を生み、溝を広げる原因になっている。

     異質な存在を排除することで安心を約束しようとする、内向き志向のポピュリズムは、フランスだけでなく世界的に勢いを増している。

     欧州各地で移民排斥を訴える極右勢力が躍進し、移民に反発した英国民は、欧州連合(EU)からの離脱を選択した。

     米国民は、壁を築いて不法移民を阻止しようと訴えたトランプ氏を次期大統領に選出した。

     来春の仏大統領選では、極右政党「国民戦線」のルペン党首が有力候補の一人に挙げられている。来秋の独総選挙でも極右政党の伸長が予想され、融和を求めるメルケル首相の苦戦が予想される。

     排外主義の波が広がれば広がるほど、排除された側は疎外感を強める。そこに暴力を誘発する過激思想が忍び寄り、自由な社会を脅かす。

     米国でも欧州でも、社会の分断が進むのか。その先に待つ混迷の世界は想像したくない。

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