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号外東京地裁、ゴーン被告の保釈請求再び却下
紙面審ダイジェスト

精神指定医取り消し 氏名報道は適切

 紙面審査委員会は、編集編成局から独立した組織で、ベテラン記者5人で構成しています。読者の視点に立ち、ニュースの価値判断の妥当性や記事の正確性、分かりやすさ、見出し、レイアウト、写真の適否、文章表現や用字用語の正確性などを審査します。審査対象は、基本的に東京で発行された最終版を基にしています。指摘する内容は毎週「紙面審査週報」にまとめて社員に公開し、毎週金曜日午後、紙面製作に関わる編集編成局の全部長が集まり約1時間、指摘の内容について議論します。ご紹介するのは、その議論の一部です。

     以下に出てくる「幹事」は、部長会でその週の指摘を担当する紙面審査委員会のメンバーです。「司会」は編集編成局次長です。

    <11月4日>

    ■ドゥテルテ大統領 「ご都合主義」と切り捨てていいのか

     幹事 数々の暴言、放言で国際的に「時の人」となったフィリピンのドゥテルテ大統領が来日し、10月26日に安倍晋三首相と首脳会談を行った。ドゥテルテ氏は先の訪中で中国と領有権を争う南シナ海問題をめぐる7月の仲裁裁判所判決を「棚上げ」することで合意したばかりで、日本は巻き返しを目指し、ドゥテルテ氏を抱き込むことに腐心したようだ。この首脳会談を本紙は27日1面<南シナ海「解決に協力」/比大統領、首相と会談>、2面<ドゥテルテ氏 ご都合主義/日比首脳会談/首相 対中にらみ厚遇/大統領の真意見えず>などで報じた。これらの記事を読み、ドゥテルテ氏の外交姿勢を「ご都合主義」と評価するだけでいいのか疑問がわいた。2面の記事の前文は「両国(日比)関係の強化と南シナ海問題での法の支配重視を確認したことで、中国寄りと見られてきた同氏の『ご都合主義』が鮮明になった。日本はフィリピンの抱き込みを図る中国に対抗し、巻き返しを図る構えだが、日中双方と関係強化を進めるフィリピンの真意は見えづらく、今後の動向は不透明だ」としている。

     一方、他紙の評価で多いのは、ドゥテルテ氏が政治と経済を分離し、日中を競わせることで両国から最大限の経済援助を引きだそうとしている、というものだ。日経27日朝刊3面の記事<ドゥテルテ氏、日中「等距離」/経済支援を最優先/反米発言は止まらず>は前文で「経済を最優先しながら米国の影響力を抑え、アジアに外交の軸足を置く。ドゥテルテ外交の輪郭が見えてきた」と書き、本文では「南シナ海問題を巡っては日中と等距離外交を模索し、経済を最優先した」と評価している。また、読売27日朝刊国際面の記事<比、経済実利に重点/首脳会談/日中を「両てんびん」/対米・安保と切り離し>も同様の見方で、「ドゥテルテ氏は首脳会談で、『何をもらって何をあげるかという問題ではない。あくまで貿易と友情だ』とも言及し……」との発言を引用した上で、「ドゥテルテ氏の立ち回り方からは『政経分離』の狙いが透けて見えてくる」と書いている。産経3面の記事も「日本への期待の裏には、同盟国として依存してきた米国と距離を置く『独自外交』の実現へ、中国の支援を当て込みながら、中国牽制へ日本を利用し、大国の間でバランスを取りたいという思惑がにじむ」と説明している。いずれもドゥテルテ外交が暴言やひょう変する言動から受ける印象とは違い、戦略性を持っているという見方だろう。

     本紙はこうした側面について「外務省幹部は『フィリピンが外交の多角化を目指している』と述べ、フィリピンが中国一辺倒でなく、日米と中国の間で『バランス外交』を取っていると指摘する」と書くにとどまった。「ご都合主義」という見方は、ドゥテルテ氏の言動に引っ張られ過ぎていないだろうか。

     司会 政治部。

     政治部長 日本側から見ればしたたかであって、かつ超適当であることを一言で言い得ている「ご都合主義」というのはいい言葉と評価した。政経分離をして両方から最大限の経済援助を引き出す。それって戦略性というほどのものだろうか。子供でもできそうな、まさにご都合主義の外交ではないか。早版の見出しは「バランス外交」という言葉を使った。編集会議ではバランス外交というのはあまりにもドゥテルテ氏のことをおもんぱかってないかという指摘もあり、「二枚舌外交」かな、という議論までして、一番しっくりくるのは「ご都合主義」だということになった。他紙も結局「ご都合主義」を説明しているにすぎないような気がする。それから「政経分離」というのは特派員の前触れ記事で書いていた。そこを強調するより、びっくりするような身勝手な発言をしたことを強調したほうがいいと判断した。

     司会 外信部はどうか。

     外信部長 ドゥテルテ氏はなかなか上手な外交をするなと思っていた。早版の見出しは「バランス外交」で、あまり面白味のない書き方になっていた。国益優先で中国からも日本からも援助を引き出した。フィリピンの国益優先の外交に、日本と中国がその舞台に上がらされたというような感じを持っていたが、一方で日本側から見た時に、直前に中国に行って、南シナ海問題にはまったく触れずに大きな支援をもらっておいて、日本に来たらまったく違うことを言っているわけだから、日本側から見たら「ご都合主義」以外の何ものでもない。前日に特派員が書いている記事には、政治と経済を分離してフィリピンが経済援助を引き出そうとしているということに焦点を当てた内容が多かったので、逆に日本側から見たらどうなんだと書いたほうが読者としてはわかりやすいので、「ご都合主義」でよかったという気がしている。

     幹事 紙面審査委員会でも外交の原稿としては目を引くユニークな見出しだったという評価もあった。

    □精神指定医取り消し 氏名報道は適切

     幹事 精神障害者を強制的に入院させるかどうかを判断する精神保健指定医の不正取得に関わったとして、厚生労働省は10月26日、指定医49人とその指導医40人を資格取り消し処分にしたと発表した。本紙は27日朝刊対社面4段、本記・サイド・「手口」の図に加え、89人の氏名を当時の所属医療機関名(所在地)付きで報じた。読売・産経は医療機関名と人数の一覧表、朝日は<主な病院別の処分者数>の表を載せた。氏名を掲載したのは本紙だけだった。異論はなかったのだろうか。

     紙面審査委員会では「(氏名を報じる)医師免許取り消しや医業停止処分に比べてどうか」「社会的制裁を加えることになり、厳しいのでは」という声が出たが、「掲載は適切」という意見が大勢だった。「知っている病院名を探した」という声もあった。読者の関心に応える情報と言えるだろう。記事にあるように「患者の人権に関わる資格でありながら、安直な方法で取得者を増やしてきた精神科医療界の倫理観の乏しさ」は批判されてしかるべきだ。愛読者センターには東京の男性から「名簿を載せたのは毎日だけ。評価している。詐欺まがいの医師を知る一助となる」との声が寄せられた一方、処分を受けた医師から弁明・反発の電話があったという。

     司会 医療福祉部。

     医療福祉部長 氏名の掲載に関して異論はまったくなかった。昨年、聖マリアンナ医科大病院で23人の指定医取り消しがあった時にも全員の名前を掲載し、23人はその後に医業停止1カ月から2カ月の行政処分を受けている。今回は人数は多かったが掲載した。精神障害の患者を強制的に入院させる権限を持つ指定医なので、不正取得は重大な問題で、厚労省が実名で公表しているのに報道機関が名前を載せないという判断のほうがむしろ不可解だ。読者にとっては自分のかかっている医者が不正取得にかかわっているかどうかを知る権利はあるので、それに応えるために今後も同じ判断でやっていきたい。

     当事者の医師から確かに連絡をもらった。担当記者が連絡を取ったところ、名前を載せたことよりも、厚労省の処分に怒っていたので、例えば行政不服審査請求などをする場合はきちんと記事化することを伝えて納得してもらった。

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