米国のドナルド・トランプ次期大統領の閣僚人事などを巡り、政権移行チームが「内紛」に揺れていると米メディアが報じている。トランプ氏の家族、共和党主流派系、反主流派系の3勢力がしのぎを削っている模様で、今後内部でさらに対立が深まる可能性もありそうだ。【ワシントン西田進一郎】

 「(政権移行チームは)とても順調にいっている」

 トランプ氏は16日、政権移行チームの内紛を伝えた米紙ニューヨーク・タイムズ紙の記事を「完全に間違っている」と批判し、チームや閣僚人事などが問題なく進んでいると強調した。15日夜にも「人選プロセスはきちんと行われている。最終的に誰が選ばれるかを知っているのは私だけだ」と強調したばかりで、「内紛」報道へのいらだちは明らかだ。

 内紛が表面化したのは、チームで安全保障を担当していたマイク・ロジャース元下院議員が15日に離脱したからだ。ロジャース氏は中央情報局(CIA)長官候補にもあがっていた共和党のベテラン政治家。CNNテレビで「出て行くように求められたのは、クリス・クリスティー(チーム副委員長、ニュージャージー州知事)と関係ある人々だ」と明かした。

 ロジャース氏はチームの責任者を務めてきたクリスティー氏に招かれた。しかし、トランプ氏は大統領選後の11日、責任者をクリスティー氏からマイク・ペンス次期副大統領に交代させた。クリスティー氏の元側近が政治的スキャンダルで有罪判決を受けたため責任者から副委員長に降格されたとみられていた。

 ところが、米メディアによると、クリスティー氏は検事時代、トランプ氏の長女イバンカ氏の夫ジャレッド・クシュナー氏の父親を脱税などの罪で訴追した「因縁」があり、折り合いが悪いという。クリスティー氏の降格やロジャース氏の解任の背景に、クシュナー氏の意向が働いているとの見方が出ている。

 CBSテレビやCNNなどは、トランプ氏が子供3人とクシュナー氏にも最高機密情報を扱える権限を付与することを検討していると報じた。トランプ氏はツイッターで「典型的な誤報」と否定したが、自らの事業と同様に政権運営でも家族を重用するのではないかとの疑念は消えない。

 政権移行チームがぎくしゃくするのは、「トランプ氏の家族」のほか、ペンス氏や大統領首席補佐官への起用が決まったラインス・プリーバス共和党全国委員長など「共和党主流派とのパイプが太い勢力」、党主流派を厳しく批判してきた選対最高責任者で首席戦略官兼上級顧問に就くスティーブン・バノン氏らトランプ色の強い「アウトサイダー勢力」という三つの勢力の混成部隊だからだ。

 そもそもバノン氏とプリーバス氏をホワイトハウス内で「対等のパートナー」とする体制は、担当範囲や権限の分担が不明で、早くも混乱や対立が予測されている。加えて、バノン氏が幹部を務める保守系ニュースサイトが白人至上主義的、人種差別的な極右運動とのつながりを指摘されており、ホワイトハウスの要職への起用に対する批判も収まっていない。