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燃料電池船

水素を燃料、静か…実用間近

東京海洋大が開発した燃料電池船「らいちょうN」=東京都江東区で2016年10月20日午後3時47分、内橋寿明撮影

東京海洋大、東京湾をテスト航行

 水素を燃料とする船の実用化が現実味を帯びてきた。水素と酸素を反応させて発電し、モーターを動かす「燃料電池船」を東京海洋大が開発し、10月に初めて東京湾をテスト航行した。国土交通省は2017年度末までに燃料電池船の安全基準を新たに設ける方針で、東京五輪・パラリンピックが開催される20年には、環境に優しい屋形船や水上バスが隅田川でみられるかもしれない。

     10月20日、東京海洋大の大学院生が操縦する燃料電池船「らいちょうN」が、大学に面した隅田川を航行した。全長12.6メートルの小型船で、時速13~15キロで東京湾へ下っていく。すれちがった水上バスとほぼ同じ速度だ。

     船尾に搭載したボンベ2本に水素が入っている。空気中の酸素と化学反応させて生じる電気と、あらかじめ充電しておいたリチウムイオン電池の電力を合わせてモーターを動かし、スクリューを回す。

     最高時速は約20キロ。13キロだと連続して約6時間航行できる。重油エンジンよりも静かで、排出するのは水だけ。排ガスのにおいはない。川や湾内に限った客船としては、技術面はほぼクリアしているという。

     普及に向けた課題はある。東京海洋大によると、建造費用は重油船と比べて2~3倍。水素を供給する「水素ステーション」やリチウムイオン電池の充電設備も必要だ。さらに船に積み込む発電装置の小型化が求められる。

     波による揺れや塩害といった海上特有のリスクもある。そこで、国交省は将来の普及に向けて、発電装置にどれほどの強度があれば安全に航行できるかの基準を設ける。20年には東京の「舟運」での実用化にこぎ着けたい考えだ。東京海洋大に協力してもらい、今後も燃料電池船の試験航行を重ねてデータを集める。

     実用化を見据え、舟運に採用する計画を立てた企業もある。JR山手線浜松町駅東側(東京都港区)の再開発を手がける「NREG東芝不動産」は、開発地の横を通る運河に船着き場を設け、羽田空港を往復する航路や屋形船に燃料電池船を投入する。20年までに着工し、数年かけて整備する。

     東京海洋大の清水悦郎准教授(制御工学)は今後、東京湾で水上バスを運航する企業にも活用を提案する意向だ。「燃料電池船は実用段階にきた。技術の高さが広く周知されて普及が進めば、開発コストや装置の代金も安くなる」と期待する。【内橋寿明】

    動力源としての水素の活用 列車でも研究が進む

     動力源としての水素の活用は近年、補助金の導入や実験環境の整備が追い風となって、急ピッチで進んでいる。政府も2020年の東京五輪にあわせて、将来の水素社会の可能性を世界にPRしようとしている。

     トヨタ自動車は14年末、水素と酸素を反応させて発電し、モーターで走る燃料電池車を世界に先駆けて発売した。燃料電池バスも17年初めに売り出し、20年には東京都内を中心に100台以上を走らせる計画だ。他社も燃料電池を搭載したフォークリフトやオートバイの開発を進めている。列車でも研究が進む。

     船では、東京海洋大に先行し、建設会社などが昨年、燃料電池の漁船を開発。環境省の実験に参加し、長崎県五島市沖で性能を試した。国土交通省海事局の担当者は「自動車に続いて船舶でも実用化されれば、交通全体での取り組みが大きく前進する」と話す。

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