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駆け付け警護

壮行会、漂う緊張感…「安全に留意し活動」

隊員の家族らが見守る中、壮行会で師団長の訓示を聞く南スーダン派遣施設隊の自衛隊員=青森市の陸上自衛隊青森駐屯地で2016年11月19日午前、西本勝撮影

 安全保障関連法に基づき新たに「駆け付け警護」の任務を付与され、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣される陸上自衛隊部隊の壮行会が19日午前、青森市の陸自青森駐屯地であった。稲田朋美防衛相は「自衛隊の国際平和協力の歴史で新たな一歩になる」と訓示した。壮行会には派遣隊員約350人と家族が出席。稲田氏は家族に向けて「全員が帰国する日まで支援に万全の態勢で臨む」と強調した。

 部隊は南スーダンの首都ジュバとその周辺で道路の整備などにあたる施設部隊で、20日から3回に分けて派遣される。国連職員などが襲われた場合に助けに向かう駆け付け警護と、部隊の宿営地を他国軍と一緒に守る共同防護が来月12日から可能となる。

 会場の家族席には派遣隊員の妻が幼子を抱く姿や、息子とみられる中学生らしき学生服姿が見られたが、取材は許されず、ピリピリした空気が漂った。

 派遣隊員を前に納冨中(のうどみ・みつる)第9師団長は「新任務が付与されるが、派遣施設隊の主任務は南スーダンの国づくりのための施設活動であることには何ら変わりない」と訓示。派遣部隊長となる田中仁朗(よしろう)1等陸佐(46)が出発の準備完了を稲田氏らに報告した。この後、派遣隊員は家族と集合写真を撮ったり稲田防衛相と会食したりしたが、報道陣には公開されなかった。

 防衛省によると、新任務を付与された11次隊は20代~40代が中心で、女性隊員は過去最多の15人。夫婦で派遣される隊員もいる。第9師団は「本人の希望も確認して隊員を選んだ。家族にも、新任務などについて説明してきた」としている。

 壮行会後、田中1佐は「しっかり訓練してきたので、何の不安もない」と言明。現地情勢について「衝突が起きているのは承知しているが、ジュバは比較的平穏だと思う。情報を収集し、安全確保に留意して活動したい」と緊張した様子で言葉を選んだ。

 この日、青森市内では安保法制に反対する市民らが郊外のショッピングセンターで派遣中止を訴え、ビラを配ったが、大きな混乱はなかった。【村尾哲、宮城裕也、岸達也】

「犠牲でないように」…被災地の住民

 第9師団(青森市)は東日本大震災の被災地で、救助や不明者の捜索などに当たった。寄り添ってくれた陸自隊員の姿は被災者の脳裏から今も離れることはない。仮設住宅で暮らすお年寄りは「温かく接してくれた人たち。犠牲者を出してほしくない」と、異国の地に向かう隊員を不安な表情で気遣った。

 震災で津波に襲われた岩手県陸前高田市では、陸自が市内全域で活動した。「ありがたくて自衛隊の人と別れる時は涙が出た」。小学校校庭の仮設住宅で暮らす佐々木綾子さん(81)は振り返る。

 地震発生後、自衛隊ヘリが避難所の上空を飛ぶ度に黄色の手ぬぐいを結び合わせた旗を振り、「食料が足りない」と訴えた。物資がすぐに届けられた時は「日本に自衛隊があって本当に良かった」と痛感したという。

 市内では仮設風呂も隊員らによって手際よく設置された。同じ住宅で暮らす佐々木トクさん(88)は「大きな銭湯みたいで気持ち良かった」と、つかの間ながら悲しみと疲れをいやしてくれた湯船の記憶は鮮明だ。被災者支援もこまやかな配慮で親身に対応した隊員たち。任務とはいえ、頭が下がる思いだった。

 新任務の駆け付け警護を担う南スーダンでは、酷暑の中で緊張も強いられる。隊員たちがどんな状況に遭遇するのか、2人は想像もできないものの、ともに太平洋戦争で空襲を経験し、戦時の武力の恐ろしさは身に染みている。「自衛隊には危険な場所へ行ってほしくない気持ちもある。若い人が犠牲にならないよう活動してほしい」。2人は口をそろえた。【藤井朋子】

「新任務は非現実的」

 海外NGO関係者を中心に、駆け付け警護の任務を疑問視する声は消えない。南スーダン情勢に詳しいNGO「日本国際ボランティアセンター」スーダン現地代表の今井高樹さん(53)は「自衛隊に武器を使わせたいとしか思えない。非現実的だ」と批判する。

 今井さんは2010年まで3年間、スーダン南部で職業訓練支援などに従事。11年の南スーダン独立後はスーダンの首都ハルツームに事務所を置く。南スーダンの首都ジュバでは今年7月、大統領派の政府軍と前第1副大統領派の反政府勢力が衝突して150人が死亡し、同国暫定政府が成立して以降、最悪の事態となった。

 「襲撃してくるのが反政府勢力とは限らない。政府軍の兵士が襲ってくれば、駆け付け警護の前提は崩れるのではないか」と今井さんは問題提起する。新任務を非現実的と見るのは、政府のPKO参加5原則が「紛争当事者が日本の参加に同意する」とし、自衛隊は駆け付け警護で政府軍(紛争当事者)とは対峙(たいじ)できないからだ。

 自衛隊が事前の訓練で、国連施設周辺で群衆が暴徒化した場面を想定したことについても、今井さんは「市民を敵に回すことになりかねず、NGOが二度と活動できなくなる恐れがある」と懸念している。【平川哲也】

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