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華恵の本と私の物語

/4 コップをわったねずみくん

 「こまりましたねぇ、ハナエさんの作品さくひんだけがないって……。それでは、一年ねん一組くみのみんなでさがしましょう」

     先生せんせい言葉ことば合図あいずに、クラスのみんなががり、教室きょうしつすみ掃除そうじロッカーのかげさがはじめた。「こっちこっち」とか「どこかなー」とか、まるで宝探たからさがしをするかのようにたのしそう。わたしは、ゴミばこちかくをうろうろした。

     つからなくていい。むしろつからないでほしい。全員ぜんいん作品さくひん廊下ろうか展示てんじするなんてきゅうわれてもこまる。みんなのにさらすなんて、ずかしくて、えられない。先生せんせいに、「なくなりました」とはなしたら、展示てんじからのがれられるとおもったのに。こんな事態じたいになるなんて……。

     先生せんせいが、ふと、廊下ろうかほうた。そのあいだにわたしは、ゴミばこをのぞいた。あった。クラッシュして、わずかにくるまかたちのこした物体ぶったいが、さかさまにんである。

     わたしはそれをし、教壇きょうだんかった。

    先生せんせい、ありました」

    「どこにあったの?」

    「ゴミばこなかです」

     先生せんせいはわたしのをのぞきむ。

     こめかみからみみにかけて、じわっとあつくなってくる。

    「そうなの。よかったわね。みんな、ハナエさんの作品さくひんつかりました! このなかに、てたひとがいたら、先生せんせい正直しょうじきってね」

     みんなが自分じぶんせきにもどっていく。あっという宝探たからさがしがわって、ちょっとつまらなそうだ。わたしももどろうとしたとき先生せんせいにやさしくめられた。

    「ハナエさん、かえりのかいわったら、職員室しょくいんしつにきてね」

     放課後ほうかご職員室しょくいんしつくと、先生せんせい表情ひょうじょうすこかたかった。

    「あ、ハナエさん、きたのね」

     あれ? こえひくい。

    「どうして自分じぶん図工ずこう作品さくひんを、ゴミばこてたの?」

     ドクン、とのどおくのあたりからおとがした。

     ……いつから? 先生せんせいはいつからづいていたの?

     こえない。みみまわりにせまってくるドクンドクンというおときながら、わたしは、自分じぶん上履うわばきをじっとていた。

    +  +  +  +  +

     自分じぶんのやったことを、だれかのせいにしてしまいたいときって、ありますよね。

     『コップをわったねずみくん』では、ねずみくんが、コップをってしまい、ぞうさんや、きりんさんや、あしかくんのせいにしようとかんがえます。ねずみくんは、うそをつかない勇気ゆうきをもつことができるでしょうか。

     わたしも、二十年近ねんちかくもまえのことなのに、いまでもときどきこうしておもします。してしまいたい、「うそ」のおもです。<毎月第まいつきだい日曜日掲載にちようびけいさい


     エッセイストの華恵はなえさんが、ほんにまつわるおもきなほん紹介しょうかいします

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