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余録

漢字の「余」はとってのついた長い針を…

 漢字の「余」はとってのついた長い針をかたどっている。白川(しらかわ)静(しずか)の「常用字解」によると、余はうみを摘出する手術に用いられるほか、土中に突き刺して地下の悪霊を取り除く呪具(じゅぐ)に使われた。これで悪霊をはらい清めた道が「途」だという▲できるならば地中の魔を封じるのに用いたい余が、逆に震災の被災者の心につらい記憶を呼び起こさせる針となってしまう余震である。「3・11」から5年半以上を経て福島県沖で起こったマグニチュード7・4という大地震、これも大震災の「余震」なのだという▲この最大の余震で4年ぶりの津波警報が福島、宮城両県に発令された。住民はもちろん、震災被害地での警報に全国の人々が巨大津波の惨禍を思い浮かべたろう。被災者には胸苦しいフラッシュバックとなったに違いない▲結局、津波は仙台港での1・4メートルが最大だったが、気象庁は同じメカニズムによる余震と津波が今後も起こりうると警告している。ならば3・11の教訓をふまえた防災体制の現状を再点検し、問題点を摘出する針とせねばならない今回の余震と津波警報の経験である▲災害心理学でいう日常性バイアスとは、災害の警告があっても日常感覚にとらわれて非常事態のスイッチが入りにくい心理傾向をいう。3・11の教訓からテレビは強い調子で避難を呼びかけるようになったが、さて肝心の住民個々はどう受け止め、行動されただろう▲被害を防ぐための警報がその役目を果たすことで軽視されてしまうのも世にありがちだ。だがどこのどんな警報であれ、住民一人一人が防災意識の死角を自己点検する機会にしたい災害列島である。

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