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「いざ行(ゆか)む雪見にころぶ所まで」は…

 「いざ行(ゆか)む雪見にころぶ所まで」は芭(ば)蕉(しょう)の句である。雪が降れば雪見へと繰り出した江戸の粋人(すいじん)だった。だがそれをからかって、「雪見には馬鹿と気のつく所まで」と詠んだ川柳子もいる▲江戸の人が初雪を喜ぶさまを「雪見の船に歌妓(かぎ)を携え、雪の茶の湯に賓(ひん)客(きゃく)を招き……酒亭は雪を来客の嘉瑞(かずい)となす。雪の為に種々の遊楽をなす事、枚(あげて)挙(かぞえ)がたし」と記すのは越後の鈴木牧之(すずきぼくし)の「北越雪譜」だった。雪に苦しむ国に暮らす者には考えられないことという▲雪国の暮らしと思いを伝えるこの本は江戸で評判となり、以後「初雪のたった二尺は越後なり」などという江戸川柳も生まれた。首都圏の降雪をめぐる毎度の騒ぎに北国の人々があきれているのは今も同じだろうが、それにしても今季はちょっと早すぎる初雪である▲きのうは東京都心で観測史上初の11月の積雪があった。11月の降雪そのものが54年ぶりで、首都圏では珍しい紅葉と雪の光景である。交通機関が乱れ、足を滑らせる人も続出したのはいつも通りだ。ただその積雪が2尺ならぬ2センチだと言えば、雪国の方は耳を疑おう▲この11月の雪、東京上空に1月上旬並みの強い寒気が入り、太平洋上を進む低気圧の湿った空気とぶつかったためという。冷気の南下は「北(ほっ)極(きょく)振動(しんどう)」という地球規模の気象現象によるもので、そういえばこの言葉、近年の世界的な厳冬や暖冬の時も聞いたことがある▲雪見のお供が「こんな時に歩くのは俳諧師(はいかいし)か盗人だけだ」とぼやく江戸小話もある。今や東京でも通勤・通学の混乱や高齢者の歩行や雪かきの困難で、雪に心浮きたつ大人は少なくなったのかもしれない。

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