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社説

全農改革 看板だったはずなのに

 政府・与党は農業改革案を固めた。全国農業協同組合連合会(JA全農)の改革が柱だ。肥料など購買事業の効率化や農産物の販売強化を通じ農家の所得向上を図るという。

     具体的な目標設定は全農に委ねる。全農や自民党農林族が抜本改革に反発したためだ。全農がどこまで本腰を入れて取り組むのだろうか。

     安倍晋三首相は農業改革を成長戦略の柱としてきたが、強い指導力を発揮した形跡はない。実効性を伴わなければ、看板が色あせるだけだ。

     全農の売上高を示す取扱高は年約4・7兆円と大手商社並みだ。独占的な取引に安住した非効率な経営が農業の高コスト体質を招いていると指摘されてきた。

     購買事業は肥料などを仕入れて農家に販売し、取引額に応じて手数料を取る。仕入れ価格が高く、取引額が増えるほど手数料を稼げる。肥料などの価格は海外より割高だ。

     政府・与党案は購買事業の簡素化を求める。コストを下げ、農家が安く買えるようにするためだ。農産物販売も販売額に応じて手数料を取るのではなく、農家から買い取ったうえで販売する方式への転換を促す。全農にリスクを負わせ、より高く売れるルートを開拓させる狙いだ。

     全農には改革の数値目標を含んだ年次計画の策定を要請する。政府・与党が進捗(しんちょく)状況を定期的にチェックする。

     だが実効性には疑問が残る。どう実行するかは全農に委ねたからだ。

     計画に求めるのは「5年間の改革集中推進期間に十分な成果が出るもの」とあいまいだ。自主改革は全農が主張してきた。非効率な流通形態を温存してきた全農が大胆な改革に踏み込むとは考えにくい。目標が低いと、チェック効果も限られる。

     政府・与党案に先立って政府の規制改革推進会議がまとめた提言は購買事業撤退と買い取り方式への転換を1年以内に行うことを求めた。JAや自民党農林族は「地方創生に逆行する」と反発し、期限を拒んだ。

     中山間地など競争力の弱い農家の農産物販売も引き受けてきた全農の役割に配慮することは大事だ。それでも、達成期限を明示しなければ、改革は進まないのではないか。

     農業改革は、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の発効に備え、政府が進めてきたものだ。トランプ次期米大統領がTPP離脱を明言したが、高齢化が進む農業に改革が必要なことは変わらない。

     首相は、農業改革を成長戦略の要となる「岩盤規制」改革の本丸に位置づけ、全農改革を「試金石」と強調してきた。看板倒れに終わらせないため、改革をしっかりと仕上げていくべきだ。

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