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社説

北海道と鉄道 維持できる公共交通を

 緑の大地を1両編成の列車が駆ける。ひとけのないホームに雪が降り積もる。映画やカレンダーの中では印象的な風景だが、北海道の鉄道をとりまく現実は厳しい。

     JR北海道が大規模な路線の見直し方針を発表した。在来線10路線13線区を「JR単独では維持困難な路線」とし、廃線や自治体との共同運営などを視野に、地元との具体的な協議を始める。

     対象線区の長さは合計で、同社の運行在来線の約5割に上る。早期に手を打たなければ、「2019年度中に厳しい経営状態になる」(島田修社長)ほど深刻だという。

     地元では「切り捨てるな」との声が根強いようだ。しかし、生活の足としての利用が減ったから持続できなくなった、というのが実情ではないだろうか。「鉄道ありき」ではなく、住民が使いやすく、長続きする移動手段の姿を考える時である。

     それにしても、なぜこれほど多くの線区が持続困難となったのか。

     九州の約2倍ある広大な土地に人々が分散して住む北海道は、札幌近郊を除くと路線ごとの利用がもともと少なかった。そこに道路の整備と人口減少が加わり、利用者が一層減少した、という事情がまずある。

     利用が減ると、運行頻度を下げたり、運賃を値上げしたりせざるを得ない。ますます不便になり、利用者は減る。悪循環が続いてきた。

     さらに、設備の老朽化、度重なる自然災害による復旧費用が大きな重しとなった。安全に運行するための投資がままならないというのでは、交通機関としての資格を失う。

     問題はこれからどのような公共交通に変えていくか、だ。JR北は、1列車あたりの平均乗客数が10人程度と極端に少ない線区を廃止対象とした。バスへの転換を前提に地元との協議が本格化する。

     より複雑なのは、即廃線の対象となっていないものの、JR北だけでは維持できない区間だ。線路など鉄道施設にかかる費用を自治体が負担し、JRが運行を担う「上下分離」方式も検討されそうだが、赤字が地元自治体に移るだけでは、長続きしない。自治体も疲弊している。

     「線路ありき」の発想からいったん離れてみてはどうか。住民の移動ニーズを目的や頻度、時間帯などについて精査し、それに最適の公共交通を地域ごとに探る必要がある。

     北海道には、高齢化や人口減少に加え、冬場の厳しい気候といった特別な事情もある。これまで抜本的な策を打ってこなかった責任は、JR北はもちろん、自治体や国にもあるはずだ。町の将来像、公共交通のあり方について、国や北海道も積極的に知恵を出してほしい。

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