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ストップ性暴力

女性グループ「もっと普通に性を語ろう」

「性についてもっと女性が主体的になろう」と呼び掛ける(右から)きのコさん、ト沢さん、たかださん、染矢さんの4人=東京都渋谷区神南で2016年11月19日、加藤隆寛撮影

プロジェクトがスタート

 女性がもっと普通に性について語れる場を--。「真面目に、楽しく、主体的に」をモットーに、セックスやパートナーとの関係などについて“平温で”語ることを目指す女性グループのプロジェクト「SEX and the LIVE !!」のオープニングイベントが11月19日、東京・渋谷で開かれた。企画した20~30代の女性4人に、ゲストとしてアダルトビデオ(AV)監督の二村ヒトシさん(52)、AV脚本家の神田つばきさん(57)を加えたトークでは、AV出演強要問題も取り上げられた。

 プロジェクトをとりまとめるのは、自身の性被害体験を公表して性暴力をなくすための活動を続けてきた「A-live connect(アライブコネクト)」代表のト沢(うらさわ)彩子さん(29)。性暴力について語ろうとすると「暗い」「堅い」「聞きたくない」といった反応が多いことから、「普通のトーンで気軽に楽しく、性の話ができる場を作りたい」と思い立ったという。イベントでは、なごやかな雰囲気で率直な意見が交わされる中、「女性が性の『客体』から脱するためには」「性暴力をどうとらえるか」など、出演強要問題の根底に通じるテーマも多く語られ、会場に詰めかけた多くの女性たちが熱心に聴き入った。

 他にプロジェクトに参加したのは、性教育に関する講演などを行うNPO法人「ピルコン」理事長の染矢明日香さん(30)▽複数の性愛パートナーを同時に持つ「ポリアモリー」を公言してメディア出演・ライター活動を行っている会社員、きのコさん(33)▽「正社員」として自身の結婚相手を募集する架空の企業サイトを開設し、「ダメ恋愛指南コンサルタント」としても活動するたかだまなみさん(28)--の3人。

AV業界からは監督の二村さん(右)と脚本家の神田さんがゲスト参加し、出演強要問題などについて思いを語った=東京都渋谷区神南で2016年11月19日、加藤隆寛撮影

 二村さんは女性側の欲望に焦点を当てたAVの監督で知られ、出演強要問題を巡っては、毎日新聞の動画インタビューで「性と自傷行為は結びつきやすく、強要する側は頑張りすぎる人の弱さを突いてくる」などと発言している。恋愛心理をテーマとした著書も多く、染矢さん以外の3人は二村さんの読書会で知り合ったという。神田さんは講演などで「性差別をなくすには、女性がもっと性について発信する側に回るべきだ」と訴えてきた。

 「なぜ女性は普通に性の話ができないのか」という問い掛けに対し、二村さんは「性を語る女性は『被害者』か『奔放な人』のどちらかであることを求められ、どちらの話も男性にとって娯楽になっている。(強要問題で)フェミニストの分断が起きている理由もそこにある」と指摘。AVメーカーを経営し、自身の出演作を売っていた経験もある神田さんは「被害者であることを強要されるのは大嫌い」と強調し、ト沢さんは「男性に『変われ』と言うだけでは、女性は客体のまま。女性自体も変わりながら、社会全体が変わっていかなければ」と問題提起した。イベントでの議論を抜粋して紹介する。【AV問題取材班】


イベントの議論 主なやりとり

 ト沢さん 神田さんのことは、AV強要問題の記事で初めて知りました。「性について女性の発信が少ないから、女性が性の客体になってしまう」とおっしゃっていましたね。

 神田さん 強要問題が表面化した時、ジャーナリズムの中では、AV出演者たちが「全員性奴隷なんだ」ということになってしまい、「なんか変だ」と思ったんです。私が自分の行為を撮って売っていたのは、それがすてきだと思っていたから。例えば、浮世絵は男性も女性も均等に楽しめるよう描かれていますが、AVはそうじゃない。ドラマのラブシーンには「その先」があるはずで、男性は(AVという)見るものがあるのに、女性にないのはやっぱりおかしい。

 (集団わいせつ事件を起こした大学生の証言に)「女の子をモノみたいに扱っちゃいました」という話があって、すごい正直な告白でびっくりしました。彼だけを責めるべきではなくて、社会全体がそうなっている(女性をモノ扱いしている)のだと思う。常に男性だけが性産業の消費者だったら当然、そうなります。そこを変えていきたい。

 二村さん 「男は女を侮辱することで性的に興奮する」という考え方があります。今とは社会が違っていた前の時代、女性もそれを受け入れていた。女性に主体性がなくても、うまくやっていけた時代が長く続いていたんです。

 ト沢さん これまではむしろ「客体」であることでうまくやれたけど、今ははざまの時期にありますよね。女性も働き始め、時代がどんどん変わってきている。

明るくポジティブな性の話題が続き、会場は笑いに包まれた=東京都渋谷区神南で2016年11月19日午後1時30分、加藤隆寛撮影16年11月19日、加藤隆寛撮影

 二村さん 時代が違うのに過去の価値観でやっているから、いろいろ困っているんだと思います。

 神田さん 今まで男性が(社会から)守られていたんでしょうね。女性が働かないと本当に国がやっていけないという問題に直面し、「女性が客体のままでやっていけるのか?」というところまで来ているのに、意外と気付いていない人が多い。

 たかださん 特に地方はまだまだ保守的です。私も地元では「女は働くな」と言われます。

押しつけられる「被害者像」

 神田さん 私は(出演強要問題について)なんでも話したいんだけど、「求められているのは『こんなひどい目に遭いました』という話だから、それ以外のことを話しても面白くないよ」と言われる。そういう話をすると、なんか男性が少しいい気分になるらしいんですね。「俺が守ってやらなきゃ」って。

 二村さん 侮辱できるからですよ。

 ト沢さん 私が当事者としてテレビに出た時、「笑顔を取り戻して」「僕が君を助けてあげる」などというメッセージがたくさん来ました。性暴力の被害者は「かわいそうで、とにかく傷付いている」という文脈で語られてしまいますが、ほかのパーソナリティーもある。私は昔からすごくよく笑うし、男の子を嫌いにもなっていない。求められる被害者像というものに昔からずっと苦しめられ、抵抗し続けてきました。

 そもそも今、女性が普通にセックスの話をできる状態ではありません。話したら「ヤレるの?」とか「はしたない」と言われてしまう。

 二村さん 女性にも性の現場があるんだけれども、それは「被害者として」か「奔放すぎる人として」のどちらか。どちらにせよ、それって男性側から見れば娯楽ですよね。同情してあげたい気持ちになるか、おもしろがるか。女性誌のセックス特集も「男性に捨てられない技術」みたいな書き方になっていて、セックスがうまくなることは女性を自由にしない。被害者意識のある、性を嫌悪する側の人たちにとっても全然いいことではない。今、(AV出演強要に絡んで)問題になっているフェミニストの分断も、そういう(女性像の)決めつけの中で起きているのではないでしょうか。

 ト沢さん 「女子力」の話にも通じてきます。「女性はこうあるべきだ」という押しつけになりやすい。

 きのコさん 自分で「女子力を高めよう」と思っている分にはいいけど、他の人から「女子力低いね」「それって女子力だね」とか言われるとモヤッとしちゃう。

性欲とは「包丁」のようなもの

 神田さん ト沢さんの書いたものを読んで、私自身すごく楽になった。「騒いじゃいけない」と思ってきたアレやアレは性暴力だったし、その場で「やめて」と言えなくても「あれは嫌だったよ」と思っていいんだなと気付いて。

 ト沢さん 性暴力に遭ったことがないと言う人も、「痴漢くらいならある」「セクハラ経験はあるけど、レイプされたわけじゃないし、言うほどのことじゃない」と言うことがある。嫌なことをされたら「嫌だ」と言っていいし、思っていいんです。「これは世間で言う被害なんだろうか」という物差しに合わせて、嫌だと感じたことを忘れてしまうんですね。

 染矢さん 性暴力や避妊をしないセックスをするのは「すごく悪い男」というイメージがあったんですけど、性教育の現場で話を聞くと、本当に普通の人、「むしろいい子じゃん」と思うような人がそういうことをするケースがすごく多いんです。被害者になるのも「すごく弱い子」や「遊んでいる子」ではなく普通の子。日本の奥深い問題だと思います。

 二村さん 日本の社会がそこをあいまいにしてしまう面はあるけど、もう一歩、普遍的なところまで行くと、みんな「自分が加害者だ」ということを知らないとよくならないんじゃないかな。

 ト沢さん 誰でも人を傷付け得るんですよ。この人は悪い人、いい人と切り分けるのではなくて「行為」で見ていった方がいい。

 二村さん 傷付いた時には「嫌だ」と言っていかないといけないんだけど、(加害者側は)言われたことによって「あっ、ごめん」では済まなくなってしまう。自分の存在に対して罪悪感がわいてしまうから。

 ト沢さん 性暴力について男性に話をしてもらうと、だいたい「罪悪感がすごい」と言うんだけれども、別に性欲って悪いものではないはずだし、私は「包丁」みたいなものだと思っています。人の首元にいきなり突きつけたら怖いし、切ったら血が出る。でも、野菜を切って料理をすればいいんですよ。使い方だと思う。誰にもたぶん加害性があるんだけれど、それに対してそんなに罪悪感を覚えなくていいんじゃないかな。

 神田さん 男性はやっぱり(加害性を)認めたくないのでは。DV(ドメスティックバイオレンス)を受けている人の文章はいろんなところで読めるけど、DVをしている男の心理を書いたものは読んだことがない。そういうものを読んで情報共有できれば、たぶん(DVの)可能性を低くできると思います。

 二村さん 加害者であるという意識と根本的な罪悪感、自己否定感みたいなものを切り分けないと生きていけない。被害者も「自分は被害者だから加害者をやっつけたい」という気持ちだけだと、どんどん苦しくなります。

 ト沢さん これまで性暴力の当事者として話をしてきて思うのは、「被害者が」と言っているだけでは何も変わらないということ。「男が変われ」と言っているだけだと、たぶん(女は)客体のままだと思うんですよね。女性自体も変わりながら、社会全体が変わっていかなくちゃいけない。

「AVファンタジー」と性教育

 染矢さん 学校での性教育は「よい出産を迎えるために」などという生殖の話ばかり。特に小中学生には、性行為イコール非行、問題行動だから「抑えなければいけない」という前提で教育方針が作られているんですよね。

 ト沢さん だから「性暴力をしちゃいけない」と言われても、何をしてよくて、何をしちゃいけないかが全然分からないと思う。セックスについて学ぶところがないから。

 たかださん 私たちは「AVファンタジー」しか知らない。

 神田さん 作っておいて言うのもなんだけど、AVなんか頼っても性について分かるわけがない。自分の子供を見ていても「混乱しているんだな」と思います。「相手に何をしてあげたいの?」「何を受け取りたいの?」というところからうまく性に向かっていくようなものを、私たちはこれから作らなければいけないのかなと思います。

 きのコさん 処女や童貞が見るAVみたいなもの?

 二村さん 作らないといけないですね。市井の性教育が必要だということ。

 ト沢さん 性についてまじめな話をしながら、ちょっと楽しく話したりして、だんだん普通に話せるようになっていけば、少しずつそういうコミュニケーションに対する議論も巻き起こせるのではないかと思っています。

   *   *   *

「SEX and the LIVE !!」の動画チャンネル

https://www.youtube.com/channel/UCQDSR2vhFmwG3nNi6YZJ7sw

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