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くれないさやか あきいろ奈良

冬が終われば春が来て 春が終われば夏が来る そして秋 それはいまも変わらない

1300年前、日本の中心であった奈良 そんな奈良も あきいろさやか

写真・文 はしもとゆうすけ

宇陀市街

青藍(せいらん)から不言食(いわぬいろ)の世界へ。

すこしずつ すこしずつ ついには なだれを打って変化する。

写真は時を止めるのが目的ではない。

止めた一瞬の前後をも見せることができれば……。

と思うのだ。

吉野山

吉野へ行った。

正確には吉野へ寄り道したのだが。

湧き上がる水蒸気と朝日に照らされた、木々のコントラストが美しい。

桜の紅葉を手前に配して遠近感を強調した。

吉野山

引き続き吉野山から。

金峯山寺手前の駐車場近くの大きな木。紅葉のピークにはまだ少し早かったようだ。

大和柿のような色づきのもみじはグラデーションに富み、カメラやレンズの性能、性格を知るにはとても良い被写体だ。

中古で18000円の望遠レンズでも、作品は作れる。

補色

緑の葉が少しずつ赤く染まっていく。

一本の枝を介して対称に広がる葉は、一足先に赤くなり、緑の葉とお互いを、引き立て合う補色となった。

自然とは本当によく出来ているものだと実感する。

紅葉も花もできれば風景の中に溶け込むように撮りたいタイプのカメラマンで、このようにクローズアップで撮ることは少し照れくさくもあるが、そういった面白さも感じ始めるようになった。

それと同時に傷んだ葉も被写体として選ぶことも増えた。

春日大社

春日大社は長い参道からすでに神聖な空気感に満ちている。

お寺と神社では明らかに違う何かが存在していて、それは信心深くないひとでも明確に分かる。

具体的に言うことは出来ないのだが、物質的ではない何かの違いがあることだけは分かる。

苔(こけ)むした切り株は湿り気を含んだ重厚なそれを、あたりに解き放つ。

奈良公園

この木が好きで、3回通ってようやく真っ赤な状態を撮ることが出来た。

広角をいかしたこのような写真も食傷気味ではあるのだが、これでもかと言わんばかりのあきいろもやはり必要だろう。

朝日をいっぱいに浴びながら枝を広げる木々。四方に広がる枝は毛細血管のようで、太い幹は大動脈だ。この大動脈に体をあずけて、自然と一体になれるように意識してみたが、むしろ自分(人間)が異質なものであるという思いを強く感じる結果となった。

長岳寺

紅葉の始まりが早かったとはいえ、地域差は当然あり、また同じ場所でもその木の場所や種類によっても色づき具合はかなり違うようだ。

長岳寺の境内にも真紅といっていいほど真っ赤に色づいたもの、そしてこのように青丹(あおに)からだいだいへのグラデーションを残すもの、長岳寺は本堂を含めた紅葉の景色が素晴らしく、ぜひとも収めたかったのだが、あいにくカメラマンが視界から途切れることがなく、このような切り取り方に終始した。

きっと私も誰かの邪魔になっていたに違いない。

そのあたりはお互い様だ。

春日の杜

昼でも薄暗い杜(もり)。どこまで続いているのであろうか、この辺りは立ち入り禁止区域も多く、たいていはロープで仕切られているのだが、ここだけはそうなっていない。

神の使いであろう鹿は自由に闊歩(かっぽ)するが、私自身はこれ以上立ち入る気にどうしてもなれない。

苔と紅葉。蒼(あお)く染まった朝の空気が、たまらなく美しかった。

神の使い

奈良では鹿を神の使いだという。

鹿は奈良公園一帯~若草山まで広く生息しているが、たいていはただ「鹿」としてだけ生きているように見える。

ところが鹿をたくさん撮っていると、ときおり「もしかして……」と思うものに出会うことがある。

堂々と威厳のあるその姿は、まさに神鹿だと言わんばかりだ。

だが、それはきっと人間の都合の良い解釈だろう。

彼らはただただ鹿なのだ。

神の使いなどではない。

あるはずがない。

でも……。

はしもとゆうすけ

サラリーマン写真家。1970(昭和45)年11月生まれの46歳。「奈良はよいとこ」 http://www.nara-wa-yoitoko.com/ で作品を公開中。鹿写真が好評。可愛いだけではなく、その「いのち」を撮ることに奮闘中。

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