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年金改革法案 世代間の信頼、再構築を

 賃金の下落に合わせて年金支給額を引き下げる新たなルールなどを盛り込んだ年金制度改革関連法案が衆院本会議で可決され、参院に送られた。政府・与党は臨時国会の会期を12月14日まで2週間延長し、今国会での成立を目指す。民進党などの野党は激しく反対している。

     年金制度を安定させるためには深刻化する高齢者の生活困窮問題への対応を並行させ、急速な少子高齢化のスピードをゆるめて人口を維持し、雇用を安定させる必要がある。建設的な議論を求めたい。

    やむを得ぬ「賃金連動」

     年金改革法案は、年金給付額を少子高齢化の進展に合わせて調整する仕組みを、デフレの下でも適用するよう強める法案だ。こうした仕組みを「マクロ経済スライド」という。

     さらに、賃金の下げ幅が物価の下落より大きいときも、それを年金給付額に反映する。いずれも年金給付額の抑制を想定した制度改革となるため、民進党などは「年金カット法案」として批判している。

     年金の機能と仕組みについて、まずは考えたい。

     自分が何歳まで生きるか誰にもわからない。たとえ65歳で定年退職し平均寿命まで生活できるだけの貯蓄をしても100歳以上まで生きるかもしれない。個人的にどれだけ貯蓄をしても安心できないだろう。

     日本の年金制度は現役世代が納める保険料を高齢者の年金給付に充てる「賦課(ふか)(仕送り)方式」だ。個人的に積み立てて老後に備えるのとは違う。何歳まで生きても現役世代の保険料から年金は支給され続ける。

     ただし、この保険料は賃金に比例している。このため、現役世代が保険料を十分に納められる賃金を得なければ賦課方式は成り立たない。

     今回の法案は確かに年金給付額の減額につながる可能性がある。だが、保険料を納める現役世代の賃金や物価が下がるのに、高齢者への年金額が高止まりしては、現役世代が将来受給する年金の財源が減ることになってしまう。すでに年金を受給している人も、長生きすればするほど年金財源が苦しい状況に直面することになる。

     こうした点を考えれば、年金制度を長期的に持続可能にするため支給水準を賃金に連動させていくことはやむを得ないだろう。

     ただ、それでも不安を感じる人が多い背景には、低年金や無年金で生活困窮の高齢者が増え続けている実態がある。ひとり暮らしの高齢者も急増しており、家族からの扶養を期待できない人をどうやって支えていくかは喫緊の課題だ。

     そうした問題への対応をすべて年金を通じて解決しようとすることには無理がある。

     年金は25年(来年9月からは10年)という長期間保険料を払い続けた人が受給権を得られる制度だ。現役時代に保険料を納めなかったり、納める時期が短かったりしたために無年金や低年金になっている人をすべて年金で救済しようとすると、いずれ財源がもたなくなるだろう。

     パートなど非正規雇用労働者への厚生年金の適用拡大などで救済の網を広げることは必要だが、生活困窮の問題をすべて年金や現行の生活保護で解決するのは難しい。国民の公平感を揺らがせ、制度の信頼を損ねることにもなりかねない。生活困窮高齢者に対する救済や支援のあり方を早急に検討する必要がある。

    不安解消が欠かせない

     民進党は年金制度をもっと抜本改正すべきだと法案を批判している。しかし、年金を危うくさせている真の要因は支え手である現役世代の数が減り続け、支えられる高齢者が増え続けるという年齢別人口構造のアンバランスにある。

     長期的には少子化対策に力を入れて現役世代の人口減少を食い止めることだ。景気を底上げして物価や賃金の下落を防ぐことができれば、今回の改正法案による年金給付額のカットもしなくてすむ。約130兆円の積立金の利回りもよくなり、年金財源の安定にもつながる。

     また、65歳を過ぎても年金を受給せずに健康で働き続ける人が増えれば、支え手の数が増す。専業主婦は保険料を納めなくても年金を受給できるが、多くの女性が社会に出て働き、自分で年金保険料を払うようになれば、さらに支え手は増える。

     こうした展望の下に年金の将来を考え、国民に説明を尽くして理解を得ていかなければならない。

     にもかかわらず、安倍晋三首相は国会で「私が述べたことを全く理解いただけないのであれば、こんな議論を何時間やっても同じですよ」などと答弁した。年金への国民の不安をわきまえぬ、不誠実な態度だ。

     今回の改正案に高齢者が不安を抱くことは理解できる。

     だが、若者には現在の高齢者に比べて自分たちが将来受給できる年金の水準が低いことへの不公平感や不信が根強い。

     若者たちの生活基盤を強めることで年金の財源も安定し、親世代は老後の安心を得ることができる。世代間の信頼に基づく支え合いがあってこそ年金が成り立つことを国民全体で認識できるよう、議論を深めていくべきだ。

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