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「兄弟ワッショイ」男たちの荒祭り(山口県防府市)

 西日本屈指の荒祭りで知られる山口県防府市、防府天満宮の「御神幸祭(ごしんこうさい)」。数千人の裸坊(はだかぼう)たちが集い、「兄弟ワッショイ!」の掛け声とともに500キロの御網代(おあじろ)が58段の大石段を滑り下りる。地元のフリーカメラマン、原伸二郎さん(45)の写真・キャプションで、1011回目を数えた2014年11月22日の熱気をお届けする。

写真・キャプション 原伸二郎

祭りに参加するのは「裸坊」と呼ばれる男たち。この日だけは年齢も上下関係もなく、みな兄弟。白装束にサラシを巻くとき、男から男へ気合の伝授が行われる。各地域や団体が神輿(みこし)を担いで防府市内を練り歩き、防府天満宮に奉納する

防府生まれの男子なら、一度は参加させたいと思うのが親心。小さな体に巻いたサラシ姿は、まだ可愛らしく頼りないが、親からしてみれば誇らしく思える瞬間だ。近い将来、神輿の担ぎ手として参加してほしいと願う

防府市内を練り歩く途中、神輿は各地で商店に立ち寄り、商売繁盛を願って回る。15キロ近く練り歩く団体もあり、市内のあちこちで「兄弟ワッショイ!」の声が響き渡る

道中、各所で酒や食事のふるまいを受けながら防府天満宮へ向かう。母親のような愛情がたっぷり注ぎ込まれた温かい汁は、疲れた体に染みわたり、さっきまで威勢のよかった裸坊たちが少し静かになり、その顔から笑みがこぼれる

防府天満宮への階段を一気に駆け上がる。立ち止まることはできない激走。日が暮れるまで続々と神輿が走り、境内には徐々に祭りの熱気が渦巻き始める

御神幸祭はかつて、一般庶民には許されない神事だった。どうしても奉仕したいという者は、清浄なる証しとして裸になって潔斎すれば許されたといわれる。現在は奉納やお参りでも潔斎してもらえるので、裸坊として参加できない女性や観光客にも人気である

「兄弟ワッショイ!」の掛け声で境内の熱気は最高潮になり、午後6時の合図とともに裸坊たちが一斉に拝殿に飛び込む。先頭神輿、第二神輿、そして御網代が運び出されると、歓喜の声に包まれる

「防府の男ならしっかりその目に焼き付けて、いつかあの場所に立ってほしい」と願う父子の肩車姿。子供には何よりも安心できる場所だ。かつての自分もあそこにいたことを思い出し、夢中でシャッターを切る

参拝者の見守る中、500キロの御網代が大石段を滑り下りる。「兄弟ワッショイ!」の掛け声と怒号が飛び交い、1段下りるごとに歓声がわき起こる。最も危険で荒々しい光景は、見る者すべてを魅了し、興奮させる……「これが祭りだ!」

大石段を下りた御網代は、台車に仕立てられ、勝間浦の御旅所(おたびしょ)に向かう。階段下で待っていた参拝者にとって、ようやく御網代にお目にかかれる瞬間だ。カメラのフラッシュと歓声と拍手が一体となり、神々しさがより一層増した気がする

勝間浦まで、先頭神輿、第二神輿、御網代が御神幸の列に加わり、約2.5キロの道のりを裸坊たちと共に向かう。ちょうちんの明かりが幻想的な光景を作り出し、先ほどまでの騒がしさがうそのような静かな道中となる

京都から太宰府に流された菅原道真公が、ここで地元の人たちに接待を受けたことにならい、神事と接待が行われる。普段は何もない場所が、このときだけは荘厳な雰囲気となる。裸坊たちは少し休憩して、天満宮までの御帰還に備えて英気を養う

御旅所から戻った御網代は、大石段を上がり、拝殿に納められる。500キロの重さを人の力だけで押し上げるのは、一筋縄ではいかない。何度も何度も押して、少しずつ上がっていく。境内に集まった裸坊と参拝者の心が一つとなり、その応援の声に励まされ、裸坊たちは最後の力を振り絞る

御帰還後、神事を終えた御網代は奉安され、参拝者も触れられるようになる。下をくぐることでご加護をいただき、ご利益があるといわれている。こうして御神幸祭は幕を閉じた。シャッター越しに触れた熱い空気は、また来年もここに来ることを決心させてくれた

撮影者の横顔

 原伸二郎(はら・しんじろう) 1971(昭和46)年5月、山口県防府市生まれの45歳。フリーカメラマン。祭りやスポーツイベント撮影のほか、風景をバックに走る自分自身をセルフタイマーで撮影する「RUN撮り」を山口県内各地で敢行、写真展も開催した。防府天満宮「御神幸祭」は幼いころから身近な祭りで、「裸坊が一日、街を練り歩く特別な日。怒号とともに御網代が大石段を下りるときがクライマックス。祭りの神髄に触れる瞬間だ」。

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