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ごみ屋敷

背景に「セルフネグレクト」か 専門家に聞く

ごみ屋敷について語る岸恵美子・東邦大教授=東京都大田区で、藤井太郎撮影

ごみ屋敷招く行政の放任 「発見・支援・見守り」を

 家屋に大量のごみをため込む「ごみ屋敷」。背景には、高齢による体力低下や認知症などでごみの適切な処理ができないことや、生活意欲が衰えて身の回りのことができなくなるセルフネグレクト(自己放任)があるとされる。この問題に詳しい岸恵美子・東邦大教授(公衆衛生看護学)に現状や課題を聞いた。【工藤哲】

 --ごみ屋敷はごく普通の人にも起こり得ると指摘しています。

 ◆ものがたまる理由には、お店で安く簡単に手に入る一方、高齢で捨てに行くのが大変なことや、分別ルールが厳しいことなどがある。1人暮らしで足腰が弱り何日分かのごみがたまると、周囲に頼めばいいと思うが、こんなにためている人と思われたくないので頼めない。分別が不十分だとごみ置き場から戻され、ごみを出すのが怖くなる場合もある。配偶者を亡くすなどして生活意欲を失ったセルフネグレクトの人もいる。高齢化が進み、こうして孤立した人たちは今後増えていく。

 --どうすればいいのでしょう?

 ◆まず話を聞くこと。「汚いから捨てろ」と言うと傷つけるし、遠慮やプライドから「困っていない」と言う人もいる。客観的に見て困っていないならいいが、健康的な生活が保たれていないことが多い。その場合は支援が必要だ。(1)周囲にも協力してもらい対象者を見つける(2)話を聞いて信頼関係を作り支援につなげる(3)計画的に見守る--ことが大事。近所の人も行政機関に連絡して、支援が必要な人が埋もれないようにしてほしい。

 --周囲の人と行政の連携が重要だと。

 ◆一番の問題は、自分から助けを求めない人には行政が手を差し伸べないこと(申請主義)。高齢者には、多少のことは我慢すべきだとか仕方がないと考え声を上げない人もいる。それを放っておくことは行政によるネグレクトにも成り得る。見て見ぬふりをすれば本人の健康状態がますます悪化するだけでなく、解決に大きなコストがかかってしまう。

 --条例を作る自治体も出てきています。

 ◆条例化は評価できるが、ごみを撤去する代執行まで短時間に進めてしまうような条例では本人の意思に反して無理やり撤去することになり、人権が侵害される可能性がある。条例化しても本人の支援に時間をかけている東京都足立区のような自治体は評価できる。条例作りは弁護士や医療関係者と共に行うべきだ。各自治体が勝手に作ると、場合によっては単なるごみの撤去になり、本人の支援が置き去りにされることになる。怖いことだ。

 --国はどう関与すべきなのでしょうか。

 ◆根本は人権問題なので、国が法律を作り、均一的に行政が動けることが大事。保健・福祉部門が中心となり、他機関と連携する必要がある。ごみ屋敷やセルフネグレクトには国の定義がないため自治体の対応がばらばらだ。ごみ屋敷を定義して全数調査することで状況を把握するとともに、高齢者虐待防止法の虐待類型にセルフネグレクトを追加するなどして、人権問題だという認識を社会が共有すべきだ。

岸恵美子(きし・えみこ)東邦大教授(公衆衛生看護学)

 看護学博士。東京都板橋区や北区で保健師として16年間勤務後、日本赤十字看護大准教授、帝京大教授などを経て現職。研究テーマは高齢者虐待や孤立死など。著書に「ルポ ゴミ屋敷に棲む人々 孤立死を呼ぶ『セルフ・ネグレクト』の実態」など。

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