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嚥下のリハビリでQOLを高める

萩野浩・鳥取大学教授

リハビリテーションで「全人間的復権」【3】

 前回は、心臓病やがんなどの疾患によって内臓機能が衰え、日常生活に制限が出る内部障害のリハビリについて紹介しました。このほかに、食べ物をうまくのみ込めなくなる「摂食嚥下(えんげ)障害」の患者にもリハビリは行われています。摂食嚥下障害により誤って食べ物や唾液が気管に入り込む「誤嚥」をすると肺炎の原因になります。肺炎は、日本人の死因別死亡数において、がん、心疾患に次ぐ3位です(注)。高齢者では、その多くが誤嚥によるものです。また、肺炎以外に低栄養や脱水を招くこともあり、高齢者や病気治療後のQOL(生活の質)を高めるために摂食嚥下障害のリハビリは重要です。

 脳卒中や脳梗塞(こうそく)などの脳の疾患、喉頭や咽頭(いんとう)のがん、高齢によって、食べ物をのみ込めなくなったり、かみ砕くことができなくなったりすることがあります。この「食べ物を口に取り込み、胃へ送り込む運動の障害」が摂食嚥下障害です。これらの運動機能を取り戻すためのリハビリ法が研究開発されており、医師や言語聴覚士が中心となって指導しています。

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鳥取大学教授

はぎの・ひろし 1982年鳥取大学医学部卒業。同学部整形外科助手、講師、付属病院リハビリテーション部長などを経て現在、医学部保健学科教授(付属病院リハビリテーション部長兼務)。専門は骨粗しょう症、関節リウマチ、運動器リハビリテーション。特に骨粗しょう症治療の経験が深く、国際骨粗鬆(しょう)症財団(IOF)アジア太平洋地域代表、日本骨粗鬆症学会理事など要職を務める。保健師、看護師、臨床検査技師などを対象に骨粗しょう症診療のコーディネイター役「骨粗鬆症マネージャー」を養成する日本骨粗鬆症学会のレクチャーコースでは講師役も務める。著書に「骨粗鬆症治療薬の選択と使用法―骨折の連鎖を防ぐために」(南江堂)など。