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拠点病院整備へ 厚労省が初の基本指針案

長男(右)が小さいころの写真を見つめる女性。つらい記憶だったが、今回初めて見返すことができた=神奈川県横須賀市で

 国民の約2人に1人がかかっているといわれるアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患。2015年12月に施行されたアレルギー疾患対策基本法に基づき、厚生労働省は今月2日、対策の方向性を示す基本指針案を初めてまとめた。全国どこでも科学的な知見に基づいた適切な治療が受けられるよう、拠点となる病院を整備することなどが柱だ。症状をきちんと抑えることで患者が安定した生活を送れるよう、対策の具体化が待たれている。

     10月末、専門医の定期診察を受けた後、病院内のコーヒーショップで小学4年生の長男(9)がホットドッグを一つ食べた。重度の食物アレルギーで、治療を始めた4年前に食べたのはうどんわずか2ミリだったが、じんましんが出た。ホットドッグを夢中で食べる息子をみながら、神奈川県横須賀市の女性は「すごい奇跡」という思いで胸があふれた。

     長男は生後3カ月で乳児アトピー、生後8カ月には食物アレルギーと診断された。当時住んでいた岐阜県内のかかりつけ医は「3歳まで待ってから、大学病院に紹介する」との方針だった。しかし、アレルギー症状を起こすと顔がやけどのように腫れ、呼吸が苦しくなる。耐えかねて、1歳半の時から自己判断で小麦や乳製品など6品目を食べない完全除去を始めた。

     長男のアトピー性皮膚炎は劇的に改善したが、アレルギー症状を引き起こすアレルゲンへの感度が高まったのか、スーパーのパンの調理販売コーナーに近寄っただけで呼吸困難に陥ったこともあった。小麦の粉を吸い込んだとみられる。

     専門医にかかれたのは横須賀市に転居し、長男が5歳になった時だった。神奈川県立こども医療センターで、小麦などを少しずつ食べさせて、どのくらいの量で症状が出るかをみる食物経口負荷試験を受けた。アトピー性皮膚炎やぜんそくをコントロールしながら、症状が出ない範囲で食べ続けることで、次第に食べられる量も増えていった。今は牛乳以外の食物アレルギー症状はほとんど出ず、カヌーなどスポーツも楽しんでいる。

     アレルギー診療体制は地域的な偏りが指摘されてきた。食物経口負荷試験は公的医療保険が適用されているが、専門的な体制が必要で、まだ地方で実施する医療機関は少ない。アトピー性皮膚炎やぜんそくなど他のアレルギー疾患では、10万人当たりのアレルギー科常勤医数が都道府県によって「0~0.24人」から栃木、島根、徳島3県の「1人以上」までばらつきがある。

     さらに、標準的な治療法が十分広まっていない問題もある。厚労省研究班の調査では、アトピー性皮膚炎患者の5割強が「ステロイド薬をできるだけ薄くのばして塗るよう指導された」と回答し、関連学会が推奨する「湿疹を覆うように」との方法ではなかった。

     指針案では「居住地域に関わらず、科学的知見に基づく適切なアレルギー疾患医療を等しく受けられる」ことを目標に掲げ、全国的な拠点となる医療機関▽地域の拠点となる医療機関▽かかりつけ医との連携協力体制--を整備する方針を打ち出した。

     ただ、具体化は新たに設けられる検討会に持ち越された。日本アレルギー学会の西間三馨顧問は「地域拠点は各都道府県に一つは必要だ」と指摘する。横須賀市の女性も「日々の健康をサポートするかかりつけ医の存在も患者には重要。専門医の指導に沿った診療をしてほしい」と連携の重要性を訴えている。

     指針案では、ホームページなどを通じた、最新の知見に基づいた適切な治療法など、正しい情報提供の充実も盛り込んだ。「アレルギーを考える母の会」の園部まり子代表は「今は受診した医師によって、人生が左右される。患者が受けている医療が適切か判断できるよう、国が信頼のおける情報を発信していくことが重要」と指摘している。【堀井恵里子】

    ことば【アレルギー疾患】

     免疫機能が過剰に働いて慢性の炎症を起こす疾患。アレルギー疾患対策基本法では、食物アレルギー▽アトピー性皮膚炎▽気管支ぜんそく▽アレルギー性鼻炎▽アレルギー性結膜炎▽花粉症--の6疾患を挙げている。複数のアレルギー疾患の合併や、子どもの成長とともに、アトピー性皮膚炎や食物アレルギー、ぜんそく、鼻炎と進む「アレルギーマーチ」が起き得るなどの特徴がある。

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