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社説

相模原事件検証 再発防止には不十分だ

 相模原市の知的障害者の入所施設「津久井やまゆり園」で元職員の男が19人の障害者を殺害し、27人にけがをさせた事件で、厚生労働省の有識者チームが最終報告をまとめた。

     男は事件前に病院の精神科へ措置入院しており、最終報告が提言する再発防止策の柱は退院後の継続的な支援だ。しかし、精神科医療だけでなく、警察の捜査や施設側の対応についても検証しなければ、事件の全体像はわからないのではないか。

     報告によると、男が退院した際、病院は市に提出した「症状消退届」に今後の支援内容を記載せず、市も確認していなかった。病院の職員の中には退院後も男が同市内に住み続けると本人から告げられた人もいながら、東京都内の両親と同居するとの間違った情報を市に伝えていた。

     また、同病院の医師は男が大麻使用による精神障害と診断していた。男自身も薬物中毒の治療を受けることを望んではいたが、実際には同病院での薬物治療がまったく行われていなかった。治療継続の機会やきっかけはありながら、病院のずさんな対応や自治体との連携がないために生かされなかったのだ。

     報告書は、措置入院中に都道府県知事や政令市長が支援計画を作成すること、退院後は居住先の保健所を管轄する自治体が中心となり訪問ケアなどを実施することを再発防止策として盛り込んだ。

     いずれも重要な対策ではある。ただ、年間7000人が新規に措置入院をしており、退院後にこうした対策をするためには保健所や地域福祉などの人員をもっと厚くしなければならないだろう。

     再発防止策が精神科医療に関連することに絞られたのは、事件直後に安倍晋三首相らが措置入院後の検証をするよう指示したからだ。

     今回、男は衆議院議長あてに犯行予告とも取れる手紙を出しており、警察は事前にそれを把握していた。また、「やまゆり園」で男が働いていた時には障害者の存在を否定するような発言を繰り返し、障害者に対する虐待行為があったこともわかっている。

     警察や施設の対応の検証や連携のあり方に踏み込まなければ、有効な再発防止策は立てられない。

     神奈川県が独自に設置した第三者委員会は11月末に報告書をまとめ、その中で「施設側の危険性への認識が薄く、危機管理上問題があった」と指摘したが、施設内での男による虐待への対応や職員への指導については具体的な記述が少ない。

     厚労省や県の検証はまだ不十分と言わざるを得ない。悲劇を二度と起こさないためにも、総合的な視点での再発防止策が必要だ。

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