18府県33件の祭りからなる「山・鉾・屋台行事」が、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されました。どのような祭りで、無形文化遺産とはどのようなものなのでしょうか。【文・竹花周】
ポイント
<1>山車を担いだり引いたりする祭り
<2>すべて国の重要無形民俗文化財
<3>支える人たちの励みに
<4>形のないものが登録される無形文化遺産
地域の結びつきを深めてきた
「山・鉾・屋台行事」とは、山や鉾などの山車を担いだり、引いたりして練り歩く神社の祭りのことです。本来、ダシとは「出しもの」の意味で、祭りに招いた神様がよりつく物のこと。人が乗って祭りばやしを奏で、歌舞伎などの芸能を演じる屋台も含まれます。木工や金工、漆塗り、染織などの技術を駆使して華やかに飾ったものが多く、「動く美術館」とも言われます。各地域では年間を通じての準備や練習を通じて、世代を超えた交流や対話を深め、人々を結びつける大切な役割を果たしています。
グループ化して改めて登録
各地の「山・鉾・屋台行事」のうち、国の重要無形民俗文化財に指定されているのが18府県の33件。これを今回はまとめて登録しました。「京都祇園祭の山鉾行事」(京都)と「日立風流物」(茨城)は2009年にすでに独立の遺産として登録されていました。11年に「秩父祭の屋台行事と神楽」(埼玉)と「高山祭の屋台行事」(岐阜)を登録しようとした際、登録されていた二つの行事と似ている点を指摘されたため、特徴の似た33件の行事をグループとして一つの遺産と考えることにして実現しました。
景観への配慮も評価
今回の登録には、世界に認められれば祭りを支える人たちの励みになるだろうという考えもあります。住む人が少なくなったり、子どもが減ったりして、支える人が足りないという問題を抱える地域も多いため、登録が行事を続ける手助けになるのではという期待です。大半の祭りは地域の安全と平和などを願って開かれていて、江戸時代中期に広がりました。審査では、地元の木材を使って用具を確保し、木材を切り出した後も景観が壊れないよう配慮してきた点なども評価されました。
世界遺産や記憶遺産とは違う
無形文化遺産は、ユネスコの「無形文化遺産の保護に関する条約」(2003年採択)に基づいて登録される、芸能や伝統工芸などの形を取らない文化です。日本ではほかに能楽や歌舞伎、和紙、和食などがあり、今回で日本の無形文化遺産は21件となりました。形のあるもののうち、建物や自然などは「世界遺産条約」(1972年採択)に基づいて「世界遺産」に登録されます。文書や書物、絵画などはユネスコが92年から始めた「世界の記憶」(世界記憶遺産)として登録されます。