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<その165> 国際援助と憲法前文=城島徹

新著を手にする勝俣誠さん

 「国際理解教育って今すごく大事ですね」。アフリカ研究者の勝俣誠さん(70)は焼鳥屋に私を誘うと熱く語り始めた。新著「娘と話す 世界の貧困と格差ってなに?」をさかなに、開発経済学者として取りあげた話題は憲法、税金、環境、格差問題など多岐に及んだ。

     忘れられない出来事があるという。2003年1月29日の西アフリカ・セネガル。米英によるイラク攻撃(同年3月)が迫り、疑心暗鬼と緊張感が地球を覆っていた。首都のダカール大学で講演した際、助手に日本国憲法前文を現地語で朗読してもらった。

     「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」……。日本が子どもの保健や教育のためにアフリカまで来て援助している理由を説明するため、国際援助の原則を憲法に求めたのだ。

     「あなたの国の憲法前文のコピーがほしい」「国際社会で日本がそれほど、弱者のことを考えることを国の基本精神に掲げているとは驚いた」「このような前文こそ今のアフリカに必要だ……」。講演を終えると聴講者に囲まれた。その反応から勝俣さんは「自分たちの国にこんなに立派な憲法があるんだ」と再認識したといい、新著でもこの逸話に触れ、「武力以外の手段で国際問題を解決すると僕たちの国は誓ったんだ」とつづっている。その時、憲法前文のコピーを手にした現地の憲法学者はアフリカの人権や民主化憲法草案のエキスパートとして活躍しているという。

     新著では憲法のほか、地球温暖化やIT(情報技術)についても「豊かさとは何か」という文脈で触れている。たとえば「税金」。とかく私たちは「取られる」という負のイメージを抱きがちだが、「余裕のあるところから多めにもらい、余裕がなくなって困っている人びとも、同じ人間として生活できるように使われる」と説く。そして「みんなの生活の安全のための参加費」「社会や国の一員であるという一体感が崩れるのを防ぐ働きがある」とかみくだき、「社会の中で、人びとを互いに引き離すのではなく、逆にくっつける接着剤のようなものです」と語りかける。

     明治学院大で教えるかたわら、埼玉県の山間部に家と畑のある土地を得て耕し始めて十数年。「モノや食べ物を分け合って生きるセネガルの人たちには、信頼関係というセーフティーネットがある。日本はそのような豊かさがあるだろうか」。まき集めから火をおこし、沢の水をくむゼミ合宿を実践してきた「勝俣先生」の問いかけである。【城島徹】

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