メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

余録

1913年12月22日、米紙ニューヨーク・アメリカンには…

 1913年12月22日、米紙ニューヨーク・アメリカンには水につかった大勢の子どもたちが両手を上げた写真が掲載された。その記事はメキシコ当局が子どもらを銃で脅して水中に追いやり、射殺したというショッキングな出来事を報じていた▲やがて写真を撮影した英国人が名乗り出て、観光に行ったホンジュラスで水遊びをしていた子どもたちの写真だと説明する。捏造(ねつぞう)記事は米国をメキシコに介入させようとする新聞社主ハーストのキャンペーンの一環だった▲このハースト系新聞などを指すイエローペーパーは低俗なメディアの代名詞となった。部数増のためにくり返された扇情的なでっち上げ報道には、政治的たくらみも盛り込まれた。こう話をつなげれば、今日のネットの偽ニュースサイトを思い浮かべる方が多かろう▲驚いたのはネット上の偽ニュースを読んだパキスタンの国防相がイスラエルへの報復核攻撃をほのめかすツイートを投稿していたとの珍事である。当の虚報はイスラエルの国防相によるパキスタンへの核恫喝(かくどうかつ)を報じたものだが、まるで根も葉もないでっち上げだった▲イスラエル国防省による報道否定も、パキスタン国防相の軽率さへの非難や嘲(ちょう)笑(しょう)も、みなツイッターでなされたから万事当世風(とうせいふう)である。思えば米大統領選まで左右したという偽ニュースの横行だ。核戦争の脅しがいつもネット上の笑劇で終わってくれれば幸運だろう▲偏見や恐怖にとりいる虚報が正しい情報より拡散してしまうのは人の世の宿命なのか。ジャーナリズムはこの試練の時にあって自らの役割を果たせるのか。来年も自問をくり返さねばなるまい。

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 京都府警・木津署長が自殺か 息子の金銭トラブルで報道
    2. 元プロボクサーを傷害容疑で逮捕 リモコンで殴られた男性死亡 大阪府警
    3. 悪質動画 後絶たず 男子高生、集団で殴る蹴る 投稿し拡散 新潟
    4. レンジで袋ごと温めるポテトチップス発売 開発2年半の労作 カルビー
    5. トランプ氏ノーベル平和賞推薦 米から依頼 野党「恥ずかしい」と首相批判

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです