メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

<その166> フォトジャーナリストの原点=城島徹

安田菜津紀さん(佐藤慧さん撮影)

 感受性豊かな思春期の体験は心を激しく揺さぶり、歩むべき道を決することすらある。アジア、中東、アフリカ、そして東北の被災地などを取材し、写真や文字、言葉で精力的に発信しているフォトジャーナリスト、安田菜津紀さん(29)の原点は16歳の夏だった。

     カンボジアの恵まれない子どもたちを支援しているNPO法人「国境なき子どもたち」が現地の実態を報告する「友情のレポーター」を募集している--。中学生の時に父と兄を亡くし、荒れた心を抱えていた高校2年の安田さんに先生が教えてくれた。「家族ってなんだろう。その答が得られるかもしれない。絶対行きたい」。NPOが費用を負担すると知って駆り立てられるように応募作文を書いた。家は貧しく、自分と妹を抱える母は生活費を稼ぐために新聞配達とスーパーのパート仕事を掛け持ちしていた。

     その願いがかない、カンボジアへ。このNPOが運営する自立支援施設で人身売買の被害に遭ったり路上生活を経験したりした15歳から19歳までの同世代の少年少女と過ごした。「私は売り飛ばされ、殴られました」。想像を絶する体験を彼らは淡々と語った。そんな彼らも家族を語る時だけは感情を抑えきれず「自分だけ保護されて申し訳ない」と言葉を震わせた。「自分より家族を思いやる彼ら。人はこんなに人にやさしくできるものなのか」。人として生きる姿勢に衝撃を受け、そして思った。「自分だけしか守ろうとしないのは人間としてもろい。私もだれかを守れる人になりたい」

     帰国すると猛勉強を始めた。「私は知識が足りなさすぎる」と痛感したからだ。「無知が差別を生む。人を傷つけないために学ぶことは欠かせない」。奨学金で進んだ大学2年のとき、報道写真家の渋谷敦志さん(41)と「国境なき子どもたち」の事務所で出会った。紛争地を駆ける人というイメージとは違う人だった。「どんな写真を撮っているのだろう」。

     家でネット検索して驚いた。高校3年のとき、写真展で見て以来、頭から離れない写真が現れたのだ。ガリガリの体で赤ん坊に乳を与えるアンゴラ難民の母の力強い視線。それを撮ったのがなんと渋谷さんだった。「人の心に残り続ける写真の力」を確信した。

     それ以来、東南アジアで貧困にあえぐ子ども、ウガンダのエイズ孤児、東日本大震災の被災者たちにレンズを向けてきた。昨年の写真展では、シリア難民の「自分たちを苦しめているのはアサド政権でもイスラム国でもなく、世界から無視されていることだ」という言葉を来場者に伝えた。休む間もなく彼女は今後も混乱を極める中東へ向かう。【城島徹】

    毎日新聞のアカウント

    話題の記事

    アクセスランキング

    毎時01分更新

    1. 小林麻央さん死去 「愛してると旅立った」海老蔵さん会見
    2. 小林麻央さん死去 闘病ブログで発信 20日に最後の更新
    3. 小林麻耶 初めて公の場で闘病の麻央を語る「妹は本当に強い」(スポニチ)
    4. 小林麻央さん死去 会見詳報(1)最後の最後まで、愛してくれていた
    5. 訃報 小林麻央さん死去34歳 海老蔵さん妻、乳がん闘病

    編集部のオススメ記事

    のマークについて

    毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです

    [PR]