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余録

真珠湾攻撃の一報を…

 真珠湾攻撃の一報を父親が経営するシカゴの雑貨屋のラジオで聞いた9歳の女の子パットは「すごく悪いニュースなの? お父さん」とたずねた。父親は答えた。「ああ、おまえ、とても悪いニュースだ。いい人間がたくさん死ぬだろう」▲引用元はイアン・トール著「太平洋の試練」(文春文庫)だが、この時から欧州と中国の戦争は一つの世界大戦となった。中国からの撤兵を拒んで「人間たまには目をつぶって清水(きよみず)の舞台から飛び降りることも必要」と語った東(とう)条(じょう)英機(ひでき)首相が決断した日米開戦だった▲いわば中国大陸の既得権のとらわれ人となった日本が米国を世界大戦に引きずり込んだ形である。戦前の日本人の大半は夢にも思わなかったのだ。他国を侵さずとも日本が通商によって欧米諸国をしのぐ繁栄を達成できるという戦後の人なら誰でも知っていることを▲何千万もの生命をのみこんだ戦禍から生まれた「戦後」である。米国主導の自由貿易秩序と占領改革を経た国内市場は、日本に戦前のどんな空想も上回る繁栄をもたらした。そして日米開戦75年、日本の首相が初めて米大統領と共に真珠湾で戦没者の慰霊にのぞんだ▲「和解の力」とはそこでの安倍晋三(あべしんぞう)首相の演説のキーワードである。オバマ米大統領ともども今日の緊密な日米同盟をアピールしたが、もちろん両者の心中には同盟関係や自由貿易など戦後の国際秩序に異を唱えるトランプ次期大統領の影が去来していたに違いない▲地球規模で「戦後」の漂流が始まりかねぬ来年である。後世、またまたあのころが世界史の転換点だったと回想されるかもしれない「真珠湾の和解」だ。

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