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余録

柳田国男の「遠野物語」には…

 柳田国男(やなぎたくにお)の「遠野物語」には正月行事よりも15日の「小正月」の行事がたくさん記されている。家の神とも養蚕の神ともいわれるオシラサマやオクナイサマという神の木像に衣を着せたり、おしろいを塗ったりして祭ったのもその一つだ▲「福の神」を名乗る子どもたちが袋を持って家々を回るならわしもあった。「福の神が舞い込んだ」とはやして餅をもらったから、ハロウィーンを思わせる。ただしそれも宵までで、夜がふけると雪女や山の神が出て来るというので、人々は決して家から出なかった▲その15日が寒さのピークとなりそうな今冬一番の寒波がやってきた。これまで比較的雪の少なかった日本海側の各地でも積雪が続きそうで、大雪への警戒が必要という。とくに週末には強い寒気が広く列島上空を覆い、太平洋側でも雪雲の流れ込む地域がありそうだ▲その週末、14、15日は大学入試のセンター試験がある。日本海側の積雪はもちろん、きのうまでの予報では名古屋や大阪も雪の降る恐れがあるという。受験生には非情な冬将軍だが、ここは厳寒の中の試練こそ技芸の飛躍をもたらすという昔の人の考えにあやかろう▲遠野物語には火にくべたクルミの焼け方で12カ月の天気を占ったり、作付け米を占いで決めたりする小正月の行事もある。人々には新たな農事のサイクルを始動させる大事なしきたりだったらしい。その年の天候や豊凶はこの時期に準備されていると考えたのである▲「冬ナクバ 春ナキニ」は民芸運動家だった柳(やなぎ)宗悦(むねよし)の言葉である。大寒波の中の受験もまたそれぞれの春に新たなサイクルを始動させるものとなればいい。

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