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余録

「キャンプファイアでマシュマロをあぶりながら…

 「キャンプファイアでマシュマロをあぶりながら話しているようだった」。これは大恐慌のさなか、F・ルーズベルト米大統領が行った国民向けラジオ放送「炉辺談話(ろへんだんわ)」を聞いた人の言葉である。まるで父親が子に語り聞かすようだったという▲「強く、優しい、自信に満ちた声は国中に響き渡って、嵐でもみくちゃになった国民に立ち直りの力をもたらし、どんな難問にも打ち勝てるという自信をわれわれに植えつけた。この点だけからも決して彼を忘れることはない」。こちらはレーガン元大統領の回想だ▲共和党のレーガンだったが、当時は民主党のルーズベルトを崇拝(すうはい)していたことを回顧録で明かした。実際、最初の放送の直後に銀行の取り付け騒ぎが回避され、国民は落ち着きを取り戻す。人々の心に希望をともしたのは聞く者を包み込むような「声」だったという▲こちらはツイッターの140文字のつぶやきで他者攻撃や仲間ぼめをくり返してきた次期大統領トランプ氏である。久々の記者会見ではいよいよその肉声で具体的な政策構想への国民の協力を呼びかけるのかと思ったら、他者を難じる持論をくり返しただけであった▲実は公開の大統領記者会見も大恐慌時にルーズベルトが始めた。「彼はやりとりを楽しんでいたようだ」とはその時の記者の感想である。時代変わって気に入らぬメディアの質問を無視し、「ゴミ」などとののしるトランプ氏の「声」も世界中が聞くところとなった▲世界は当面、トランプ氏のののしりや攻撃のとげとげしい「声」に悩まされることになろう。「指導者」の高みとは無縁の米国大統領の誕生である。

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