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余録

「飲食を少なくして胃を養い…

 「飲食を少なくして胃を養い、言を少なくして気を養うべし」。江戸時代の本草(ほんぞう)学者、貝原益軒(かいばらえきけん)の「養(よう)生(じょう)訓(くん)」の言葉である。なるほど「気」はムダな言葉と一緒に口から出て行くらしい。「胃」についてはさらに有名な言葉がこの書にある▲「珍美の食に対すとも、八九分にてやむべし。十分に飽き満つるは後の禍(わざわい)あり。少(すこし)の間、欲をこらゆれば後の禍なし」。世人の間では「腹八分目に医者いらず」ということわざが広がったが、益軒はほしいままに飲み食いする人たちを「口腹(こうふく)の人」とさげすんでいる▲とはいえ「腹八分」で本当に寿命が延びるかどうかは科学的に論争の的となってきたそうだ。サルにカロリーを制限した食事を与える実験を続けてきた米国の大学と国立研究機関とで片や寿命を延ばす効果が「ある」、片や「ない」と正反対の結果が出ていたのだ▲その両研究チームが相互のデータを精査し、共同で発表した結論が「効果あり」だというから、泉下(せんか)の益軒もうなずいていよう。データ分析の結果、若くからカロリーを制限したサルでは寿命を延ばす効果はないが、中高年から始めたサルにははっきり効果があった▲この研究の示すところ、がんや糖尿病、脳卒中の発生率も抑えられていたから、「後の禍なし」もうそでなかった。このサルのデータは人間にもあてはめられそうだと専門家はいう。賢人の説いた節制を20年間以上も実行してくれたサルたちには感謝せねばなるまい▲「古人、禍は口よりいで、病は口より入るといえり」も養生訓にある。口舌の徒にして口腹の人たるわが身には何とも耳の痛いサルたちの節制である。

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