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あえて乗る路線バス 気軽な途中下車が魅力

生活の足として利用する路線バスでも十分、旅を楽しむことができる=iStock

 バスの旅に注目が集まっている。テレビ各社は競って番組を企画し、書籍も多い。いつも乗っている路線バスでも、細かく張り巡らされたバス網を利用すれば、旅気分を十分に味わえる。鉄道と違って停留所の間隔が短いので、思いつくままに途中下車ができるのもバスならではだ。路線バス旅の極意とは? バスファンらで作る「日本バス友の会」顧問の城谷邦男さんに楽しみ方を聞いた。【江刺弘子】

短い停留所間隔 予定にない下車も容易

 「バスは電車に比べてスピードも遅く、人々の生活が見えるのがいいですね」と語る城谷さん。郊外を旅すると、農作業の様子が見えたり、軒先につるされたダイコンに季節を感じたりと、人々の暮らしの息づかいを感じることができる。

「日本バス友の会」顧問の城谷邦男さん。事務局には、全国のバス会社の社史など貴重な資料がそろう=埼玉県ふじみの市で、江刺弘子撮影

 降車するバス停に着く前に城谷さんは、近くに座っている人に「あと何分ぐらいで着きますか」とあえて尋ねるそうだ。たいていの人が快く答えてくれ、それがきっかけで話がはずむ。その土地の名物や生活の様子を知ることができる。

 さらに、旅先のことを詳しく知るには、予定にない途中下車がお勧めだ。城谷さんは車窓から「おやっ」と感じる風景や物があれば、たいていそこで下車する。停留所を一つ乗り過ごしても、それぞれの間隔は短いから、気になる場所まで歩いて戻っても、それほど距離はない。

名物を見つける楽しさ

 城谷さんが知多半島を旅した時は、「井戸掘り」の看板を見つけて「思わず降りちゃった」。近年は井戸掘り業者も少なくなったと思っていたところに、看板が目に飛び込んできた。「何で、こんなところに」と、思い切ってその店を訪ねてみた。そこで聞いたのは、この地方は砂地で水の出が悪いため、農業用かんがい用水のための井戸掘りが盛んだということ。思いがけず、土地の成り立ちも学ぶことができた。

 また、埼玉県飯能市の飯能駅と湯の沢を結ぶ路線(国際興業)では、途中で「まんじゅう」の旗がひらめく小屋が目に入った。すぐに次の停留所で降りて店を訪ねると、地元の婦人会のメンバーがあずきや皮などすべて手作りし、名物の「名栗まんじゅう」として売っていた。「あの時に降りなかったら、おいしいまんじゅうに出合えなかった」と城谷さん。自らが見つけた名物の味は格別だ。

空振りもまた楽し 時刻表は事前確認を

「日本バス友の会」の事務局には、バスのペーパークラフト第一人者の故三浦真さんの作品も展示している=埼玉県ふじみの市で、江刺弘子撮影

 こうした途中下車の旅で役立つのが双眼鏡だ。城谷さんは「旅の楽しみを演出できる」と携行している。人が集まっている、不思議な建物など遠くに気になる風景があれば、双眼鏡でチェックして降りてみるかどうかを判断してもいい。

 一方で「気になる」と下車して行った場所が何でもなかったりすることもある。しかし城谷さんはあっさりと「それならまた乗って目的地に向かえばいいだけ」。気軽に乗り降りできる路線バスなら「空振りもまた楽し」と思える。

 ただ運行が1時間に1本や1日に数本だったりする路線もあるので、乗車する路線の時刻表を事前に確認しておくことは必要だ。

「発見」楽しむ意識 豊かな旅に

 では、旅の目的や計画はどのように立てるとよいのだろうか。

 「この美術館に行ってみよう」「あの自然公園が気になっていた」--。人の興味は千差万別だ。より豊かな旅にするには「計画したところだけを目指さないこと」と城谷さんは話す。新しい発見はないかと常に意識していたい。すると「この並木はすごい」「由緒がありそうなお寺」など心に留まる風景に出合え、旅の楽しみが広がる。実際に寄り道してみたり、「次の機会に行ってみよう」と計画したりすることで、自分なりの観光ルートが完成する。

 こうした旅で心がけることは、きっちりと時刻表どおりにスケジュールをたてないことだ。「目的地は1カ所に絞り、途中下車や目的地に着いてからの行動を楽しむよう、時間の余裕を持つことが大切」と城谷さんはアドバイスする。都市部の路線は頻繁に運行されているので、「この方向に行ってみよう」と思いつくままにふらりと出掛けることも容易だ。

 またバスそのものを見る旅もいい。「地方色豊かな車外カラーを見て『知らない街に来た』という高揚感を受ける」と城谷さん。ターミナル駅に降り立つと、まずバスの色を見るそうだ。たとえば約5~6社が乗り入れているJR広島駅。「鉄道なら一つの駅にこれほど多様な車両がそろうことはないでしょう」と、にこやかに話す。

 一般にバス車両は車体の色を一度に変えることはなく、新旧が混在して運行されている。東京都の都営バスも同様で、注視すると色の違いやノンステップのタイプなどさまざまだ。バス会社によって、座席やつり革の色、降車ボタンの位置など細かく異なるので、乗車の際にそれらを比較してみるのはいかがだろうか。


東京近郊のお薦めバス路線

 目的地に着くと、観光案内所に寄り、パンフレットをもらって周辺の見どころをチェックするという城谷さん。その土地ならではの細かなおすすめの場所が載っており、旅先での行動には欠かせないという。このように旅を続ける城谷さんに東京近郊でおすすめの路線を教えてもらった。

◆大宮駅西口-所沢駅東口(埼玉県・西武バス)

 西武バスの中で一番長い23.5キロを結ぶ。沿線に鉄道博物館(さいたま市)、日本バス友の会事務局(埼玉県ふじみ野市)、航空記念館(同所沢市)があり、1路線で「鉄バス空」の3種類を楽しむことができる。ただし大宮駅西口-所沢駅東口は1日1本。「日本バス友の会事務局」最寄りの上福岡で下車し、改めて所沢行きに乗車することで3施設を巡ることができる。

◆千歳烏山駅-寺町循環(東京都世田谷区・関東バス)

 停留所名「寺院通り一番」から「五番」の沿線に26の寺があり「東京の小京都」と呼ばれる。妙寿寺には、名工が作った釣り鐘があり、関東大震災の熱で焼けた跡が生々しく残る。常福寺の境内にはさまざまなタヌキの置物が鎮座するなど、特徴のある寺が並ぶ。

◆吉祥寺駅-成蹊学園(東京都武蔵野市・関東バス)

 平日は扉が3カ所ある「3ドアバス」を運行。同社は約10年前まで、3ドアを活用していたが、ノンステップバスの登場により、後方にドアを設置できなくなり「2ドア」に置き換わった。

◆荻窪駅南口-シャレール荻窪(東京都杉並区・関東バス)

 路線のうち、荻窪二丁目と西田端橋の間は道が狭いため、ガードマンが乗車して、バスを誘導している。

◆高坂駅-鳩山ニュータウン(埼玉県東松山市-同鳩山町・川越観光自動車)

 約20分に1本の割合で運行されているので利用しやすい。高坂駅西口(埼玉県東松山市)から大東文化大学までの道は彫刻ロード。大東文化大学の周辺には、埼玉県こども動物自然公園、埼玉県平和資料館があり、その先にはツツジの名所で知られる物見山公園が続く。公園内に入ると車の音も全く聞こえず、まるで深山幽谷の世界。この森を抜けたところに宇宙航空研究開発機構(JAXA)の地球観測センター(同鳩山町)があり、見学は無料。

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