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余録

短い簡単なパットなのに…

 短い簡単なパットなのに緊張のあまり手が思うように動かなくなる--ゴルフでいう「イップス」はふだんは精神的にタフな人にも表れる運動障害という。語源は「キャッ」という悲鳴だそうだ▲一方、ゴルフで用いられる正反対のスポーツ用語に「ゾーン」がある。極端な精神集中によって身体が自然に動く心身一体の絶好調状態で、そのようになるのを「ゾーンに入る」という。「イップス」「ゾーン」とも、他のスポーツ選手にもよく見られる現象という▲こちらは大相撲。過去12回にわたり幕内優勝次点の成績を収め、昨年は年間最多勝を達成しながら優勝と縁のない稀勢(きせ)の里(さと)だった。大関では6度の綱取りのチャンスを迎えながらことごとく逸した。綱取りイップス、優勝イップスの魔物に魅入られたかのようだった▲当時「何か足りない」と稀勢の里を評した白鵬(はくほう)に「強かった」と言わせた一番である。速攻でがぶり寄る白鵬を土俵下に突き落とした稀勢の里の逆転のすくい投げだった。横綱昇進を決定づけた14勝での初優勝。イップスの魔物をみごとにねじ伏せてつかんだ栄光だ▲「自分の力以上のものが働いたような気がした」とはその一番で体験したゾーンを語るご当人の言葉である。今まで「キャッ」と悲鳴の出そうな悔しい思いを重ねてきたファンも、信じてきた飛躍を目の当たりにできた。長年の胸のつかえがスッと下りたに違いない▲日本出身力士としては実に19年ぶりの横綱が誕生する。今さら「国技」をうんぬんするのもはやらないが、これを機に地元出身力士全体の綱取りイップスが解消すれば大相撲はもっと盛り上がろう。

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