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音楽の窓から世の中を眺めて

ジャーナリスト、江川紹子さんの音楽コラム。クラシックナビ連載。

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勘三郎さんをよみがえらせた「カヴァレリア・ルスティカーナ」

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「四国こんぴら歌舞伎大芝居」の開幕を翌日に控え、人力車に乗って「顔見せ」する中村勘三郎さん=香川県琴平町で2009年4月6日、松田学撮影
「四国こんぴら歌舞伎大芝居」の開幕を翌日に控え、人力車に乗って「顔見せ」する中村勘三郎さん=香川県琴平町で2009年4月6日、松田学撮影

江川紹子

 音楽は、時に心のアーカイブを開く鍵(かぎ)になる。ある音楽を耳にしたら、それと結びついた思い出が、目の前にありありとよみがえってくる、という経験は、多くの人がしているのではないか。

 私も、つい先日そういう体験をした。

 野田秀樹さんの新作の芝居「足跡姫(あしあとひめ)~時代錯誤冬幽霊(ときあやまってふゆのゆうれい)~」を見た時のことだ。脚本は、2012年12月に亡くなった歌舞伎俳優の十八代目中村勘三郎さんへのオマージュとして書かれた。その冒頭から、何度か流れるのが、歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」の間奏曲だ。最初は他の音にかき消されそうに小さく、そして最後の場面では舞台を包み込むように響く。

 それで、まざまざと浮かんできたのが、やはり野田さんが脚本を書いた歌舞伎「研辰(とぎたつ)の討(う)たれ」の最終場での勘三郎さんの姿と声だった。この作品でも、「カヴァレリア」の間奏曲が、実に効果的に使われていた。

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