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米軍から研究費 提供先の広がりに驚く

 日本の大学研究者ら延べ128人以上が米軍から研究資金の提供を受けていたことがわかった。2010年度から6年間で総額8億円以上に上るという。

     米軍が日本の研究者に資金提供していること自体はこれまでも知られていた。それが常態化し、まとまった資金が多数の研究者に提供されてきたことに改めて驚く。

     日本の学術界は戦時中の戦争協力への反省に立ち、軍事研究と一線を画してきた。科学者を代表する「日本学術会議」は、戦争や軍事を目的とする科学研究を行わないとする声明を戦後2度にわたって出している。1967年に出した2回目の声明は米軍からの資金提供をきっかけとしている。

     米軍からの資金提供の実態は、声明の精神が風化し、形骸化していることの表れだろう。学術界はもう一度、声明の精神に立ち返って考える必要がある。

     米軍の資金はテーマが自由で、公開性も論文発表で担保される。それが、研究者の心理的ハードルを下げているのかもしれない。しかし、それが軍事利用されない保証はない。自分たちの研究が米国の防衛だけでなく攻撃型の軍備増強にも結びつく。研究者も大学も、そうした可能性にもっと自覚的であってほしい。

     心配されるのは米軍からの資金提供だけではない。日本の防衛省は15年度から大学などの研究者に研究助成する新制度を始めた。15年度の予算は3億円、16年度は6億円、17年度は110億円まで増額しようとしている。

     米軍にせよ、日本の防衛省にせよ、民生研究の中から軍備につながる成果をコストをかけずに入手したい思惑があるのだろう。人脈作りも狙いだと思われる。いったん研究費をもらえば、その後の研究協力も断りにくくなる。そんな心理も考えておかねばならない。

     学術会議は防衛省の新制度を契機に検討を始め、先月公表した「中間とりまとめ」では軍事研究に非常に慎重な姿勢を示している。「自衛目的ならかまわない」とする少数意見もあるが、軍事と防衛の線引きは困難だ。とすれば、学術界がめざすべきは、「軍事関係の組織から研究支援を受けない」という合意だと考えられる。

     もちろん、それだけで十分というわけではない。研究費の出所によらず、成果の使い道に一定の歯止めをかけることも必要だろう。

     軍事関係の研究費を研究者が受け取る背景には、基礎研究費が不足しているという現実もある。政府は、軍事研究費の増額ではなく、本来の基礎研究費の増額にこそ目配りしてほしい。

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