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社説

大使帰国1カ月 正常化へ日韓で努力を

 長嶺安政駐韓大使が一時帰国してから、きのうで1カ月となった。慰安婦を象徴する少女像が韓国・釜山の日本総領事館前に建てられたことを受けた措置だ。

     慰安婦問題を巡る一昨年の日韓合意は、ソウルの日本大使館前に建つ少女像について、韓国政府が「適切に解決されるよう努力する」とうたった。この問題に進展がない中で、別の外交公館前に新たな像が設置されたことは合意の精神に反する。

     大使は、通信手段が未発達だった時代には自国を代表しての外交交渉を任されてきた。現代ではそうした実務的な意味合いは薄れたものの、任地において正常な外交関係のシンボルとなっている。

     その大使を一時帰国させるのは外交的な強い不快感の表明である。少女像問題の重みを考えれば、長嶺大使を帰国させた判断は理解できる。

     だが、帰国期間が長くなれば帰任時期を決めるのが難しくなる。不在の長期化は不正常な状態を強く印象づけることにもなってしまう。

     日本はこれまで、大使を一時帰国させた場合に数日から10日あまりで帰任させてきた。今回も当初は1週間程度で帰任させると見られていたが、機を逸した感が強い。

     日韓合意は、慰安婦問題を巡って悪化する一方だった日韓関係の流れを好転させた。両国とも、今回の問題で関係を悪化させて構わないと考えているわけではない。

     大使の帰国後、韓国の尹炳世(ユンビョンセ)外相は国会で「外交公館前への造形物設置は望ましくない」と答弁した。大統領権限代行を務める黄教安(ファンギョアン)首相も記者会見で「時間はかかるだろうが、(少女像の問題を)必ず克服するよう努力する」と語った。地方議会では竹島に少女像を設置しようという動きが出たが、韓国政府はこれに反対する考えを表明している。

     今月上旬に訪韓した在日本大韓民国民団の団長は少女像移転を求める「要望書」を尹外相に渡した。韓国の人々には日本に住む同胞の気持ちを重く受け止めてほしい。

     ただ、朴槿恵(パククネ)大統領が弾劾訴追された現状での韓国政府の対応能力には限界がある。日本の世論は少女像に対して厳しいが、一気に問題解決を図るよう望むのは現実的でない。

     一方で事態の長期化を受けて、韓国では最大野党の幹部から「韓国も駐日大使引き揚げを検討すべきだ」などという声が出始めた。

     このままでは双方の体面がからんで行き詰まり状態に陥ってしまう。早期の事態収拾が必要である。

     韓国政府は釜山の地元自治体に像の撤去を働きかけ、日本政府はその努力を認めるなどして早期帰任へ向けた環境作りに努めるべきだ。

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