飛行士に喜ばれる野菜や果物
地上約400キロメートルの高度を飛行している国際宇宙ステーション(ISS)を訪れる飛行士たちは、現在はロシアの有人宇宙船「ソユーズ」に乗って行きます。ISSに実験装置や食料などの荷物を運ぶのは、無人の補給船ですが、これを担っているのは、日本の「こうのとり」、ロシアの「プログレス」、アメリカの「ドラゴン」「シグナス」です。中でも日本の「こうのとり」は、最大約6トンという世界最大の補給能力を有し、最も大型のものを入れることができるので重宝されています。
その「こうのとり」の6号機が、昨年の12月に鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられ、ISSにたくさんの荷物を届けることに成功しました。宇宙にはコンセントなんてないから、ISSの生活の電源はすべてバッテリーに頼っています。これまで使われてきたのは、ニッケル水素バッテリー(計48個)ですが、実はそれが今後、「こうのとり」9号機までの4回で日本の技術を使ったリチウムイオンバッテリー(計24個)に交換されます。その大切なバッテリーを運び、無事に第1回の交換に成功しました(写真1)。
あまり報じられないのですが、飛行士たちが喜ぶ食料品もいっぱい運び入れました。今回運んだ生鮮食品の中には、リンゴ(茨城産)やミカン、タマネギなど7品目35個が入っており、クリスマス前に生鮮食品を食べつくしていた飛行士たちには大好評だったらしいですよ。アメリカ航空宇宙局(NASA)や宇宙航空研究開発機構(JAXA)のホームページには、飛行士らがかじったリンゴを宙に漂わせたり、タマネギを使ってハンバーガーを作ったりする写真が掲載されています(写真2と3)。
その「こうのとり」6号機が、さる2月5日深夜(日本時間)に、大切な国際的任務を果たして大気圏に再突入し大気中で燃え尽きました。再突入してから、宇宙ごみを取り除くための野心的な実験に挑戦したのですが、残念ながら金属製のワイヤの打ち出しがうまくできなくて、成功しませんでした。宇宙ごみの問題は差し迫った課題で、世界中が取り組んでいるのですが、まだどこも目立った進歩が見られていません。とても難しい実験ですが、ぜひ再挑戦してほしいものですね。
★的川泰宣さん
長らく日本の宇宙開発の最前線で活躍してきた“宇宙博士”。現在は宇宙航空研究開発機構(JAXA)の名誉教授。YAC顧問、「KU-MA」名誉会長、「はまぎんこども宇宙科学館」館長を務める。
日本宇宙少年団(YOUNG ASTRONAUTS CLUB-JAPAN)
宇宙好き集まれ!! http://www.yac-j.or.jp
NPO法人 子ども・宇宙・未来の会(KU-MA)
宇宙教育サポーター集まれ!! http://www.ku-ma.or.jp