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灯台ものがたり

流氷は好きですか……能取岬灯台 稚内灯台(北海道)

能取岬灯台

写真・文 岡克己

 灯台をこよなく愛する写真家、岡克己さんが、灯台のもっとも美しい瞬間を追い求め、物語をたどる「灯台ものがたり」。北海道シリーズ第2弾は、流氷接岸の能取岬灯台と稚内灯台を訪ねる。


能取岬灯台(のとろみさきとうだい)/北海道

【航路標識番号=0407 国際航路標識番号=M6882】

大正生まれの灯台だけど、レオンス・ヴェルニー設計の名残を受け継いでいる八角形灯台。現在のLB-M30型灯器となる前の写真です

 コレはスゴイ、コレが流氷? 見渡す限り水平線まで海が白い。流氷を目の当たりにしての素直な感想? うん、感動!!!ビックリマーク三つです。ロケハンのつもりで立ち寄った秋の終わりには誰もいなかったのに。さすが寒くても流氷の魔力? 観光客がいます。駐車場脇の閉まっていた公衆トイレも営業中?でした。快適暖房の車内から表に出た。インパネのデジタル表示は氷点下5度なのに、ナンダこの寒さは、体感温度、急下降。風が通り抜ける岬はメチャ寒い。

 大正のはじめ、当時、横浜にあった逓信省航路標識管理所の直営工事で建設、八角形の鉄筋コンクリート造りで1917(大正6)年10月1日に初点灯。当初は、光源に灯油を使用。同時に霧信号所業務を開始。1966(昭和41)年12月に光源を電球に変更。1980(昭和55)年4月に無人化。1989(平成元)年10月霧信号業務を廃止。1996(平成8)年1月電源を太陽電池に変更。ザックリ灯台史です。

 余談ですが、能取岬の由来は、アイヌ語でノットとオロで「ノッ・オロ」(岬のところ)という意味、これに漢字をあてたと言われているのですが、いきなり「能取岬」を「のとろみさき」って読めるのかなあ? ボクは最初読めませんでした。

 網走市街から北へ約10㌔、美岬ラインと呼ばれる道道76号を右に折れ、岬の駐車場へゆるやかに下って行く道の途中、灯台を少し見下ろせて海バックになる場所を、ロケハンで撮影ポイントに決めていた。今は雪に覆われている。その位置で大丈夫なのかどうか? カメラをセッティングしてファインダーをのぞいてみる。プロなんだからのぞかなくたって見りゃわかるだろ? それはそうなんだけど、プロだからこそ失敗は許されないのです、う~ん。

【撮影機材】オリンパスE-1 35-100mmF2.0 100mm(35mm判換算200mm相当で撮影)1/250sec F11 ISO100WB5300K RAW

冬になるとオホーツク海は流氷に埋め尽くされます。灯台のある岬からの眺めは絶景です

●ぶらりガイド●

▽アクセス:JR釧網線網走駅下車 タクシー20分

▽めし&みやげ:カラフトマスのから揚げがたっぷり乗ったご当地グルメの「オホーツク網走ザンギ丼」。店ごとに特徴がある「網走ちゃんぽん」は、「世界一の長さの焼きちくわ」を競い合った長崎県雲仙市とのコラボメニューです。そして、網走刑務所といえばニポポ人形。一つ一つが手作りの“世界にひとつだけの”お土産になりますよ。

▽おすすめポイント:流氷観光といえば砕氷船「おーろら」。強い南風が吹くと流氷は一晩で沖に去ってしまいます。接岸状況はネットでご確認を。「日本一おいしい」と評判のワカサギ釣りは、網走湖で3月中旬まで楽しめます。

網走市観光協会 http://www.abakanko.jp/


稚内灯台(わっかないとうだい)/北海道

【航路標識番号:0510 国際航路標識番号:M6905.1】

稚内灯台

 午前4時50分、夜はまだ明けきっていない。最北の街、稚内、ノシャップ岬、恵山泊(えさんどまり)漁港に止めた車中から、フロントガラス越しに20秒に2閃光(せんこう)の優しい灯火を見つめていた。あと少し、白と赤の横縞(じま)模様がギリギリ視認できるようになったら撮影を始めるつもりです。

 出雲大社(島根県)の近くにある日本一高い出雲日御碕灯台(44メートル)に次いで日本で2番目、北海道内では一番高い(43メートル)灯台、煙突と見間違うかも、とにかく細くて高い。実は、これには訳があって現在の灯台は2代目なんです。初代はノシャップ岬の丘陵地(現在の自衛隊稚内分屯地)に鉄造り灯台として、1900(明治33)年12月10日に初点灯、長い間、活躍していたのですが、1945(昭和20)年の終戦後から、周辺は米軍の通信施設やら自衛隊キャンプ地などが増強、拡張され、移設を余儀なくされました。そんな理由から、1966(昭和41)年1月10日にノシャップ岬の海岸埋め立て地に現在の2代目灯台を建設、再点灯されたというわけです。そして水面から灯火までの高さを、丘の上にあった初代の灯台と同じにするために、こんなに細くて高い灯台になったみたいです。

 灯台が立つ岬周辺は、恵山泊漁港公園として整備されていて、1968(昭和43)年7月、日本で100番目にオープンした最北の水族館(市立ノシャップ寒流水族館)や南極観測、樺太犬タロ・ジロ関係の資料がいっぱい展示されている稚内市青少年科学館が隣接しています。

 絶景夕日の景勝地だったりもするので、四季を通じて観光客でにぎわっているのですが、真冬の夜明け前、さすがに今は誰もいません。

 午前5時30分、空色が黒色から群青色に、灯台の白赤横縞模様がわかるようになってきた、さて。

【撮影機材】オリンパスOM-D E-M1 ED12-40mmF2.8 12mm(35mm判換算24mm相当で撮影)1/4sec F5.6ISO200 WB5300K RAW

「2番じゃ駄目ですか?」日本で2番目、北海道内では1番高い灯台(43メートル)です。高さは海上保安庁刊行「灯台表(平成26年度版)」に準拠

●ぶらりガイド●

▽アクセス:JR宗谷線稚内駅下車 宗谷バス「ノシャップ」行き15分、終点下車 徒歩3分

▽めし&みやげ:今しか食べられない海藻、ギンナンソウ(銀杏草)は、寒い海の岩場でお母さんたちが手摘みで一つ一つ採った、大変貴重な冬の海の味。モズクとワカメをあわせたような風味で、みそ汁や酢の物、サラダなどでどうぞ。お土産には「流氷まんじゅう」がおすすめです。

▽おすすめポイント:お土産、温泉、お食事が楽しめる日本最北端の複合施設「稚内副港市場」。「稚内サハリン館」ではロシア民謡アンサンブルグループ、ルースキー・テーレムが1日2回、無料公演を行っています。

稚内観光協会 http://www.welcome.wakkanai.hokkaido.jp/


灯台ミニ事典「岬のオアシス構想」

 GPS(グローバル・ポジショニング・システム)があるんだから、防波堤灯台はともかくも岬に立つ沿岸灯台はもういらないんじゃないの、なんて世間の冷たい声?に答えるかのように、戦後の1948(昭和23)年5月から灯台を管理している海上保安庁が「利用状況によっては廃止する場合があるとの方針を打ち出した」という記事を何かで読んだ記憶があります。最近では、1900(明治33)年築造の台場鼻灯台(山口県下関市)が2009(平成21)年2月に取り壊されました。灯台の必要性が低下しているため、海上保安庁が地元自治体である下関市に同市の指定文化財として現物譲渡を打診したところ、同市は指定文化財にするほどの価値はなく、維持保存に費用がかかるため譲渡受けを断念すると判断したことがその理由らしい、灯台ファンとしては寂しい限りです。しかし、地域のシンボル的な存在で観光資源などとしても価値の高い灯台を活用するため、2004(平成16)年3月に海上保安庁が発表した「航路標識整備事業景観形成ガイドライン」において「岬のオアシス構想」が景観形成の概念として規定されています。

 「岬のオアシス構想」とは? 海上保安庁によると「岬の先端などに設置され良好な景観を形成している灯台においては、地方自治体などと連携し、灯台周辺の公園化整備、灯台への展望台・灯台資料館の併設、灯台のライトアップなど地域住民・観光客に喜ばれる場として機能させる取り組み」なんだそうです。今回の稚内灯台・能取岬灯台は、「岬のオアシス構想」の一環として灯台周辺の公園や遊歩道が整備されています。

灯台ミニ事典「灯台に上ってみませんか」

 「参観灯台」とは、灯台の内部が常時一般公開されている灯台のことなんです。

 現在全国で15基の灯台が「参観灯台」になっていて「燈光会(とうこうかい)」が参観事業を行っています。

 参観寄付金200円(中学生以上)です。

 らせん階段で灯台の上まで上って眺望を楽しむことができるし、資料展示室を併設してるところも多いので、なるほどなるほどって知識が豊富になるし、灯台ってナカナカ良いのですよ。

◆参観灯台

入道埼灯台―――(秋田県男鹿市)灯台資料展示室併設/冬季は閉鎖

塩屋埼灯台―――(福島県いわき市)灯台資料展示室併設

犬吠埼灯台―――(千葉県銚子市)灯台資料展示室併設

野島埼灯台―――(千葉県南房総市野島崎)灯台資料展示室併設

観音埼灯台―――(神奈川県横須賀市観音崎)灯台資料展示室併設

御前埼灯台―――(静岡県御前崎市御前崎)

初島灯台――――(静岡県熱海市初島)灯台資料展示室併設

安乗埼灯台―――(三重県志摩市安乗崎)灯台資料館併設

大王埼灯台―――(三重県志摩市大王崎)灯台資料展示室併設

潮岬灯台――――(和歌山県串本町潮岬)灯台資料展示室併設

出雲日御碕灯台―(島根県出雲市大社町日御碕)灯台資料展示室併設

角島灯台――――(山口県下関市角島)灯台記念館併設

都井岬灯台―――(宮崎県串間市都井岬)灯台資料展示室併設

残波岬灯台―――(沖縄県読谷村残波岬)灯台資料展示室併設

平安名埼灯台――(沖縄県宮古島市)

 普段は灯台内部を公開していなくても、海の日とか11月1日の灯台記念日などに特別公開されてる灯台も数多くあります。

 公益社団法人「燈光会」とは、具体的には

①博物館・記念館での資料展示に関する助成

②見学できる灯台での業務

③航路標識の案内板の設置、紹介パンフレット等の作成・配布

④灯台の歴史に関する資料文献等の整理、機材の保存

⑤航路標識に関する文献・書籍の発行

などを行っているところです。

 

岡克己プロフィル

 おか・かつみ。写真家、灯台研究家。写真家・中村昭夫氏に師事。月刊誌「おかあさんなぜ?」写真部などを経て、以後フリーランス。公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員。最新刊は「ニッポン灯台紀行」(世界文化社)。

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