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<東日本大震災6年>福島2号機 内部調査(その2止) 相次ぐ「想定外」と「課題」

2号機・格納容器内のレール上で動けなくなった「サソリ型ロボット」=2017年2月16日、国際廃炉研究開発機構提供

 <1面からつづく>

福島原発、難航する内部調査

 発生から約6年が経過する東京電力福島第1原発事故。2号機では昨年12月から内部調査が始まり、今月までの3カ月間で延べ800人超の作業員らが投入された一方、溶融燃料の所在を特定することはできなかった。東電は1、3号機でも内部調査を実施する方針だが、難航は確実だ。政府と東電は2041~51年の間に作業を終えることを目指しているが、こうした廃炉工程全体にも影響する可能性が出ている。【柳楽未来】

 2号機の格納容器調査は、(1)ロボットの入り口となる穴(直径11・5センチ)を機械で開ける作業(2)その穴からカメラ付きパイプを作業員が挿入し、内部を事前に確認(3)「サソリ型ロボット」(自走式)の通路となるレール上の堆積(たいせき)物を、掃除ロボットが除去(4)サソリ型ロボットがレールを通って原子炉直下の作業用足場に到達し、溶融燃料を調査--との4段階で進められたが、想定外が相次いだ。

 「原子炉建屋の床に、図面にはないくぼみがある……」。昨年12月、機械で格納容器に穴を開ける作業を統括した総合重機大手IHIの今堀敬三さん(38)は、容器周辺の現場を初めて見て驚いた。ロボット投入のためには穴開け機械を遠隔操作し、格納容器に近付けて作業する。しかし、小さなくぼみで機械は格納容器に近付けず、このままでは計画全体が頓挫する恐れがある。

 1970年代に運転を開始した1~3号機は、過去の補修工事が図面に反映されていないケースが多く、くぼみはその一つとみられる。現場の線量が強く十分に事前確認できなかった。急きょ1メートル四方の鉄板を用意し、床に敷いて機器を遠隔操作できたが、鉄板の設置のため作業員が余計に被ばくした。

 新たな課題も発生した。機械が格納容器側面に密着できず、穴を開けられない。格納容器側の塗料が浮き上がっていたことが原因と分かり、ブラシなどを使って手作業で剥がしたが、また被ばくが増えた。

 穴開け作業は約20日かかったが、作業員1人当たりの平均被ばく量は約4・5ミリシーベルト。多くの企業は国の基準を基に、作業員の年間被ばく量を20ミリシーベルト以下と決めており、今回の作業を5回続ければ原発で働けなくなる。「第1原発の現場は、入ってみないとどうなっているか分からない」。今堀さんは振り返る。

 高い技術や専門性のある人材を確保するためには、遠隔操作や、ロボットによる自動化の作業をできるだけ増やし、人の被ばくを減らす必要がある。しかし何があるか分からない「火事場」のような第1原発では、やはり「人の手」が頼みの綱だ。現場作業を統括したIHIの広瀬康雄さん(65)は「廃炉作業をロボットで完全に自動化したとしても、現場の状況が想定と異なれば対応できなくなり、作業は止まる。廃炉作業は相当長い道のりになるだろう」と話す。

ロボットには限界も

 「強い放射線の影響でロボットに付けたカメラの映像が暗くなってしまった」。今月9日の記者会見で、東電の木元崇宏(たかひろ)原子力・立地本部長代理が説明した。2号機の内部調査を担う原発メーカー・東芝はこの日、格納容器内にあるレール上の堆積(たいせき)物を取り除く「掃除ロボット」を投入したものの、ほとんど除去できずに約2時間でカメラが壊れた。

 掃除ロボのカメラは、累積1000シーベルトまで耐えられる設計。しかし内部は推定で最大毎時650シーベルトあった。ロボットは、カメラ映像を作業員が別室のモニターを見て操作する。カメラという「目」を失えば操作できなくなる。掃除ロボの故障は後に響くことになる。

 16日に投入された「サソリ型ロボット」。走行用ベルトで移動可能で、今回の調査の主軸だった。レールを通路にして原子炉直下の作業用足場に下り、溶融燃料を調査する計画だったが、レール上に厚さ1センチの堆積物が残っており、走行用ベルトに挟まって身動きできなくなった。

 結局、原子炉直下の映像を撮影できたのは、ロボット投入前に実施した「人の手」による確認方法(1月30日)だけ。カメラが先端についたパイプを作業員が挿入した結果、作業用足場に穴があることや、溶融燃料とみられる黒や褐色の堆積物が広範囲にこびりついていることなどが分かった。最も有効だったのは「人の手」だった。東電は「世界初の調査で、十分なデータが入手できた」とプロジェクトの成果を強調するが、溶融燃料の全体像は6年経過しても不明だ。

 水素爆発した1、3号機の調査はさらに困難が予想される。2号機より放射線が強く、格納容器の下部には数メートルの汚染水がたまっているためだ。1号機では3月中にロボットを投入する計画だが、3号機は日程すら決まっていない。「取り出すには、溶融燃料が内部でどう広がっているか把握しなければならない。しかし、どういう調査をしたらいいかすらまだ分からない」。1号機の内部調査を担当する原発メーカー・日立GEニュークリア・エナジーの岡田聡主任技師は語る。

 政府と東電は今夏に溶融燃料の取り出し方法を検討し、事故から10年となる2021年の取り出し開始を目指す。この廃炉工程は、事故発生から11年後に溶融燃料を取り出した米国のスリーマイル島原発事故(1979年)を参考にしている。だが、スリーマイルは溶融燃料が圧力容器内にとどまったのに対し、第1原発の場合は圧力容器を突き抜けており、調査が進むほど課題が膨れあがる。

 政府と東電の廃炉工程について、原子力規制委員会の田中俊一委員長は「まだ夢みたいなことを語る状況ではない。暗中模索に近い」と指摘する。取り出し計画は夢なのか実現可能なのか--。政府と東電に突きつけられている。

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