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温暖化対策

亀山康子氏との一問一答

 地球温暖化に懐疑的とされるトランプ米大統領の誕生で、米国内や世界全体の温暖化対策にどんな影響があるのか。最近、米国などの関係者と意見交換した国立環境研究所の亀山康子・社会環境システム研究センター副センター長(国際政治)に聞いた。

    【聞き手・大場あい】

     --トランプ政権で、米国の温暖化対策はどう変わるのでしょうか。

    短期的な混乱と長期的な動きは分けて考えなければいけません。まず、短期的には、政権の人事を見ても、停滞することは否めません。ティラーソン国務長官は石油業界の出身です。またプルイット環境保護局(EPA)長官はオバマ前大統領が進めた火力発電所の二酸化炭素(CO2)排出規制策「クリーンパワー計画」を白紙にするような発言をし、EPA自体の権限も狭めようとしており、止めることは難しいでしょう。ただし、米国内にこういった動きを抑制する機能があります。混乱の中で抑制力がどこまで働くか、今後半年くらいは注視していく必要があります。

     --どんな抑制力があるのでしょうか。

    一つは科学者です。現政権は温暖化に限らず科学全般を信頼していないような言動が多く、科学者たちが非常に強く反発しています。

     二つ目は共和党内の動きです。かつては党全体が温暖化懐疑派でしたが、世論調査では2~3年くらい前から、党員の中でも「温暖化は深刻な問題だ」という回答が増えています。最近はエネルギー政策の健全化や税収増を狙い、ベーカー元国務長官らが炭素税法案を検討しています。トランプ政権は今、大統領令をどんどん出し、議会の抑制を受けずに政策を進めていますが、従来の方針を本格的に変えようとすれば、どうしても新しい法律を作らなければなりません。党内の動きを見ても、いくつかのケースでは議会を通すのは難しいと思われます。

     例えば、連邦最高裁は2007年、CO2を含む温室効果ガスは大気浄化法が規定する大気汚染物質で、EPAが規制権限を持つとの判断を示し、EPAに自動車からの排出規制を強く促す判決を出しました。この判断を変えるには別の法律を作ったり、もう一度裁判を起こして違う判決が出たりしなければいけませんが、決して簡単ではありません。

     さらに、強い権限を持つ州があります。州にエネルギー政策を決める権限がある以上、大統領の意思が働く範囲には一定の限界があるでしょう。昨年の国連気候変動枠組み条約第22回締約国会議(COP22)でも、温暖化対策に熱心なカリフォルニアのような州と、石炭石油産業を重視する州とに分かれるだろうという意見が出ていました。

     --抑制力次第で、長期的には対策が進むこともありえるのですか。

    現在のトランプ大統領の発言通りにはいかない可能性はあります。ただし、不安の種はあります。政権発足後、EPAに対してホームページから温暖化関連の記述を削除するよう指示が出ました。実際には記述は残りましたが、「国連の枠組みの下で国際協力する」といった部分が削除され、温室効果ガス削減策よりも、被害軽減策により焦点が置かれた内容に改変されました。こういった変化が実際の政策にどう影響するか、注目していかなければなりません。

     --一時的にでも米国が温暖化対策に後ろ向きな姿勢だと、「日本も対策を取る必要はない」という意見が出てくるのではないでしょうか。

    米国の混乱は短期的なものです。長期的な変遷を考えれば、京都議定書採択時(1997年)と比べ、世の中は大きく変わりました。当時は温暖化対策は国民にとって負担で、削減目標を立てるときに各国間の公平性が問題になりました。今は20世紀型の石炭や石油中心から、再生可能エネルギーなどが中心の21世紀型の社会に向かって、どこの国がいち早く変われるかという競争の時代です。

     日本国内ではまだ対策を負担とみるのと、新しい社会構築への投資とみるのと両方の動きがあります。「米国が化石燃料中心にかじを切るのであれば、日本が再生可能エネルギー普及を頑張る必要はない」という意見は出るでしょう。でも、自国内に石油などの資源を抱える米国と、資源を輸入に頼る日本では事情が違います。また「米国第一」として進めようとしている政策は、米国の一部産業にとっては良くても米国経済全体にとって最善とは限らず、見直される時期が来るかもしれません。米国に追随するのではなく、日本でどういうお金の使い方が本当に国益を守ることなのか考えて方向性を決める必要があります。

     また、シェールガス革命で、米国内の火力発電は既に石炭から天然ガスに大きくシフトしています。「クリーンパワー計画」を白紙にしたとしても、市場原理で安いガスのシェアが拡大すれば、CO2排出量は長期的には減っていきます。トランプ政権が対策を止めたから日本もやらなくていいと解釈してしまうと、後で排出量が減っていないのは日本だけということになりかねません。

     --2020年からすべての国に温室効果ガス削減努力を義務付けた「パリ協定」の下で、実行のための詳細ルール作りに向けた交渉が進んでいます。トランプ政権の影響はあるでしょうか。

    懸念されているのはお金の問題です。トランプ政権は国連機関などへの拠出金を減らすという方針を打ち出しています。COPへの途上国からの参加者数を減らさざるを得なくなったり、各国政府に科学的な根拠を提供する国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の活動が制約されたりといった影響があるでしょう。米国分を補てんしようと思っても、どの国も公的資金はこれ以上出せません。再生可能エネルギーを導入したいという途上国は多いですが、その資金が不足して、やる気があっても対策を実行できないということになるかもしれません。この間に、例えばIPCCなどで、資金面でも中国がリーダーシップを取ろうとする可能性はあり、中国の出方に注目しています。

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