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灯台ものがたり 東西の神威岬に立つ 神威岬灯台&北見神威岬灯台

神威岬灯台

 灯台をこよなく愛する写真家、岡克己さん。灯台のもっとも美しい瞬間を追い求め、冬は北へ、夏は南へ、撮影の旅を重ねてきた。北海道シリーズ最終回は、日本海とオホーツク海の神威岬に立つ古参と新参の灯台2基を訪ねる。


神威岬灯台(かむいみさきとうだい)/北海道

【航路標識番号=0590 国際航路標識番号=M7004】

神威岬灯台

 積丹町にある野塚郵便局の先で雷電国道229号は左に折れる。右は北海道道913号、積丹出岬灯台のある積丹岬に続く。赤信号に車を停止、助手席にある水ボトルを取ろうとして手を伸ばした時に、バックミラーに写る自分の顔を見てあぜん。顔面蒼白(そうはく)、カサカサの白い唇、途中で地吹雪に数回遭遇、何も見えずに立ち往生、今更ながら真冬の北海道、こわいです! カー時計のデジタル表示は<15:50>。余裕で神威岬にたどり着けるはずだったのに、冬場は神威岬の無料駐車場に通じる道が16時で閉門になる。ここからいくら急いでも、もう間に合わないでしょ。冬の神威岬灯台、ボクには鬼門なのかい? 数年前にも雪で大トラブルに見舞われ断念した記憶が。信号が青に変わった、後続車がいないのを確認して右ウインカーに変更、少し先にある神威岬を一望できる無料駐車場に車を止めた。小樽を出る時にコンビニで買った野菜サンドを頬張る、遅い昼食、今は晴れているのに、赤い太陽が冬空をあかね色に染めながら神威岬の向こう側に沈むさまを見つめていた。

 「恨みますぞいお神威様よ、なぜに女の足止める」と江差追分にもうたわれ、北海道最大の海の難所ともいわれる女人禁制の神威岬に灯台ができたのは1888(明治21)年8月25日、鉄造りの灯台として初点灯、建設費は当時のお金で2万5494円90銭8厘と案内板に書かれていました。当時、北海道庁が1888年から6年間にわたり20基の灯台を建設します。その最初に建てられた灯台で、現存する北海道の灯台では5番目に古い灯台です。その後、1923(大正12)年6月10日に最初の改築、1960(昭和35)年4月28日に鉄筋コンクリート造りで2度目の改築、再点灯したのが、現在の灯台です。そして、その年の8月31日に無人化、現在は小樽海上保安部が管理しています。

夏にロケハンしたときのカットです。夏でも強風だと灯台まで続く「チャレンカの小道(約700メートル)」は通行止めになるのでご注意ください。灯台のある岬の先端に立つと、語り継がれる義経伝説、チャレンカ悲恋物語の神威岩を見ることができます

 翌朝10時、下のゲートが開門してすぐに上がってきた。夏に訪れた時にはあんなににぎわっていたのに、今はこの広い駐車場にボクの車だけ、もちろん誰もいない。レストハウスも閉鎖中、公衆トイレも閉鎖中、遊歩道を女人禁制の門まで上ってみた。神威岬の先端、灯台まで続く「チャレンカの小道」は、強風のため通行止め。岬を渡る風の音がすごい、雪交じりの風が頬を刺す、痛い。フードをかぶり右上にある北海道遺産にもなっている電磁台(電波探知塔)のある展望所を目指す。現在体重60キロ弱、風で防護柵に持っていかれる、危ねえ。あと少しなのに、最後は三脚が自動小銃? 戦争映画さながらの匍匐(ほふく)前進、アラアラですよ。

 ファインダーをのぞく。灯台に続く遊歩道の先に白地に黒帯の小さな灯台を……夏のロケハンが功を奏す。雪もやんで、少し明るくなってきた。よし、いいぞ!

【撮影機材】オリンパスOM-D E-M1 ED12-40mmF2.8 25mm(35mm判換算50mm相当で撮影)1/1000sec F5.6 ISO200 WB5300K RAW

赤い太陽が冬空をあかね色に染めながら神威岬の向こう側に沈むさまを見つめていた

●ぶらりガイド●

▽アクセス:JR函館線小樽駅下車 北海道中央バス「積丹神威岬」行き2時間20分、終点下車 徒歩20分(バスは4月下旬まで「積丹余別」止まり。2時間15分、終点下車 徒歩約1時間)/車なら……札樽自動車道小樽インターチェンジ(IC)から1時間40分 下車徒歩20分

▽めし&みやげ:肉厚のエゾアワビは天丼もオススメ。アカガレイは煮付けでどうぞ。積丹海のりはアツアツご飯にたっぷり乗せた岩のり弁当で。ツブの塩辛、甘エビの塩辛はおみやげに。

▽おすすめポイント:海岸沿いの国道229号を走る冬のドライブは、まるで水墨画を味わうような美しさ。「岬の湯しゃこたん」の露天風呂は左に神威岬、右に積丹岬と最高のロケーションです。

積丹観光協会 http://www.kanko-shakotan.jp/


北見神威岬灯台(きたみかむいみさきとうだい)/北海道

【航路標識番号=0427 国際航路標識番号=M6895】

北見神威岬灯台

 北海道のオホーツク海沿岸は、昭和30年代まで網走の能取岬灯台から最北端の宗谷岬灯台まで、距離にして250キロ強の間には、沿岸灯台が一基もないダークシーでした。昭和30年代以降になって灯台設置が進められ、北見神威岬灯台は1962(昭和37)年12月8日に初点灯しました。

 網走方面からオホーツクライン(国道238号)を北上、稚内まで108㌔の道路標識を過ぎると道路脇に神威岬公園が見えてくるが、そこからでは灯台を確認できない。その先にある北オホーツクトンネルの手前で右折して旧道へ、オホーツク海に小さく突き出た北見神威岬の崖斜面の中腹に立ってます。

 今は昔、灯台のすぐ下を国鉄興浜北線(こうひんほくせん)が通っていたのですが、1985(昭和60)年に廃止されました。まだ鉄道が現役だったころ、「撮り鉄(写真を撮るのが好きな鉄道ファン)」の人たちには、灯台と鉄道と海をまとめて見渡して撮影できる絶好のスポットだったらしく、画面左の崖を駆け上がっていたそうです。片や「灯台ファン」のボクは、下の旧道に車を止めて、廃線跡の小道を駆け上がるだけで息も絶え絶えなのに。「撮り鉄」おそるべし。

 点灯に間に合って良かった。少し南にある音稲府岬灯台のロケハンに思いのほか時間をとられ、アクセルを踏み込んで、カッ飛んでやってきました。車を降りるや否や、カメラバッグを背負い、三脚を小脇に抱えて猛ダッシュ。他人が見てたら、きっと滑稽(こっけい)なんだろうなあ、この様子。でも、ボクの灯台撮影では日常茶飯事のような気がします。

【撮影機材】オリンパスE-3 ED12-60mmF2.8-4 35mm(35mm判換算70mm相当で撮影)1/8sec F5.6 ISO200 WB5300K RAW

北見神威岬灯台

●ぶらりガイド●

▽アクセス:JR函館線旭川駅下車 都市間バス「特急えさし号」3時間半、終点下車 宗谷バス「浜頓別線」乗り換え20分、「カムイ岬」下車 徒歩20分/車なら……JR宗谷線音威子府駅から1時間

▽めし&みやげ:水揚げ全国一を誇る毛ガニは3月半ば解禁。枝幸の毛ガニは身がぎっしり詰まってミソも濃厚。焼きガニもカニご飯もいいけれど、ゆでたてのシンプルな味がやっぱり一番。サケとばなど海産物のおみやげも豊富です。

▽おすすめポイント:ウスタイベ千畳岩は毎年7月「枝幸かにまつり」でにぎわう磯遊びポイント。「オホーツクミュージアムえさし」には枝幸町出土の土器や刀など国指定重要文化財が展示されています。町を一望できる「三笠山展望閣」は11~4月冬季休館です。

枝幸町観光協会 http://esashi-kankou.com/index.html


灯台ミニ事典「名前の付け方」

 灯台を管理している海上保安庁は、航路標識に名称を付与する場合、一定の基準を設けています。

 「航路標識の名称は、海図に記載されたその場所の地名を付与する。もし設置場所の地名が海図にないときは市町村名を付与する。既設の標識に付与されている名称と類似する場合又は混同する場合は地方名、旧国名等を冠する」

 今回の場合は、積丹半島の神威岬灯台と区別するために、北見神威岬灯台には、旧国名の北見が付けられています。

◆その他の例

出雲日御碕灯台(島根県出雲市)――紀伊日ノ御埼灯台(和歌山県美浜町)

陸中黒埼灯台(岩手県普代村)―――陸前黒埼灯台(宮城県石巻市)

長崎鼻灯台(鹿児島県長島町)―――薩摩長崎鼻灯台(鹿児島県指宿市)

鞍埼灯台(宮崎県日南市)―――――能登鞍埼灯台(石川県珠洲市)

沖ノ島灯台(福岡県宗像市)――――土佐沖ノ島灯台(高知県宿毛市)/田辺沖ノ島灯台(和歌山県田辺市)

灯台ミニ事典「『埼』と『崎』」

 灯台名は、大瀬埼灯台(長崎県)、観音埼灯台(神奈川県)、塩屋埼灯台(福島県)というふうに海図に記載されている「つちへん」の「埼」の字になります。地名は「やまへん」の「崎」(大瀬崎・観音崎・塩屋崎)なのに、灯台の名前は「つちへん」の「埼」の字なんです。

 でも例外もあります。「犬吠埼灯台」(千葉県)は、地名も灯台名も「つちへん」の「埼」なんです。島根の日御碕にある「出雲日御碕灯台」は、地名も灯台名も「いしへん」の「碕」なんです。同じ「ひのみさき」でも和歌山県にある「紀伊日ノ御埼灯台」は「つちへん」の「埼」なんだけどね。そして変化球を一つ、高知の室戸岬(むろとみさき)にある「室戸岬灯台」は「むろとざきとうだい」と読ませます。

岡克己プロフィル 

 おか・かつみ。写真家、灯台研究家。写真家・中村昭夫氏に師事。月刊誌「おかあさんなぜ?」写真部などを経て、以後フリーランス。公益社団法人 日本写真家協会(JPS)会員。最新刊は「ニッポン灯台紀行」(世界文化社)。

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