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社説 トランプ税制 公正な競争ゆがめるな

 トランプ米大統領が「歴史的な税制改革」を目指している。就任後初の議会演説では詳細に踏み込まなかったが、法人税改革と中間層向けの減税に意欲を見せた。

     米国内外で特に注目を集めているのが「国境調整税」と呼ばれる措置だ。企業が米国製品を輸出して得た所得は法人税を免除する一方、輸入された製品や部品には高率の税金を課す。税の形をした事実上の輸出補助金であり、輸入制裁金と言える。

     国境調整税は、共和党のライアン下院議長が提案したものだが、雇用創出のため輸出推進、輸入制限を唱えるトランプ氏が同調する可能性はある。下院議長案が、現行35%の法人税率を20%へ引き下げることを盛りこんでいるのも、「法人税15%」を選挙戦で唱えたトランプ氏と方向が重なる。

     輸入品を法人税で差別する国境調整は、世界貿易機関(WTO)のルール違反となる恐れがある。ただ、米政府は、このほど議会に提出した年次通商報告の中で、WTOの勧告や裁定に必ずしも従わないとの方針を打ち出した。「米国第一主義」の通商政策実施に向け、先手を打ったような形である。

     世界一の大国が、国際秩序に背を向け、なりふり構わぬ輸出優遇や輸入排除に走れば、WTOなど多国間の約束が空洞化する一方、対抗措置の広がりにより、世界経済が収縮することにもなりかねない。

     もっとも、国境調整税導入のハードルは高そうだ。与党内にも問題視する向きがあり、すんなり導入されるとは考えにくい。

     とはいえ、法人税の大幅引き下げは共和党が目指しているばかりか、トランプ氏の公約でもある。その財源として、国境調整税から得られる税収は魅力的なのだろう。だが、国境調整税導入によるコストが販売価格に転嫁されれば、大企業、特に輸出企業が受ける恩恵の対価を、一般の消費者が「値上げ」という形で支払うことになる。中間層の負担軽減と矛盾する政策だ。

     国境調整税の支持者は、ドル高を招く政策であるため、価格への打撃は軽減されると主張する。だが、外国為替市場は、さまざまな要因で日々変動するものだ。課税によるコスト上昇分を相殺するドル高が教科書通りに起きる保証はない。

     ムニューシン米財務長官は米メディアのインタビューで、大規模な税制改革案を「近い将来」とりまとめ、8月までに関連法を成立させる意向を明らかにした。米国の税制とはいえ、世界に大きな影響を与える可能性がある。日本政府は他国と協調し、米国に公正な制度やルール順守を促していく必要がある。

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