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<経産省>取材制約 全部署を電子施錠 突出する厳格さ

執務室のドアをカードで解錠して入室する職員ら=東京都千代田区の経産省庁舎内で2月27日、宮川裕章撮影
参院予算委員会で経産省内の全執務室を施錠した措置について自民・長峯誠氏の質問に答える世耕経産相=国会内で3月1日、川田雅浩撮影

 経済産業省が先月末から全ての執務室に施錠するとともに、取材対応を厳格化する措置を始めた。情報管理の徹底ぶりは、外務、防衛、警察など機微情報の多い省庁に比べても突出している。エネルギーなど国民生活や民間の経済活動と深く関わる政策を立案する経産省が、取材活動を制約する措置を講じたことはさらに議論を呼びそうだ。【まとめ・青島顕】

    世耕経産相肝いり

     「企業情報、通商交渉に関する機微情報を扱っている役所。関係者から信頼をしてもらうために庁舎管理を強化しようということで、就任当初から問題意識を持っていた」。世耕(せこう)弘成(ひろしげ)経産相は先月21日の記者会見でこう説明した。

     経産省は同27日から各部署の扉を電子施錠し、来訪者は内線電話で職員に連絡している。取材には室外の会議室や食堂で対応するという。さらに取材対応を管理職(課長・室長級)以上に限り、原則メモを取る職員を同席させ、内容を広報室に報告させる内部ルールを運用している。

    他府省庁は限定的

     「中央省庁」と呼ばれる1府11省1庁に執務室の施錠状況を尋ねたところ、経産省以外に全ての部署を施錠しているところはなかった。特定秘密を含む情報の保有が多い府省庁も、施錠するのは「機密性、秘匿性の高い情報を扱う部署」に限っていた。

     防衛省は統合幕僚監部と陸上・海上・航空幕僚監部、情報本部など、外務省も日米安全保障条約課など、警察庁は警備局の執務室に限って施錠しているとした。昨年末現在で指定された特定秘密487件のうち防衛省は289件、外務省は39件、警察庁も29件を保有している。経産省が保有する特定秘密は4件にとどまる。

     財務省(特定秘密の保有なし)は「原則施錠せず、例外的に為替介入事務や国債入札業務の部署」(広報室)、総務省(特定秘密の保有5件)も「行政管理局の情報システムに特化した部屋」(官房総務課)など施錠は例外的であり、原則していないとする省庁が多かった。一方、外局と呼ばれる中央省庁以外の官庁では、金融庁や復興庁などが全執務室を電子施錠している。

    記者側は抗議

     取材を受ける際にメモを取る職員を同席させる経産省の新しいルールについては、防衛省が「メモを取る人を同席させるのは場合による」(報道室)と答えたが、他の中央省庁でルールを設けているところは見当たらなかった。経産省以外に農林水産省が「報道マニュアルがある」と答えたが、「プレスリリースをどう出すかなど業務上のもの」(報道室)だった。

     経産省を拠点に取材する記者でつくる「経済産業記者会」は施錠が始まった先月27日、施錠や取材対応ルールが取材活動への重大な支障になるとして、世耕氏に抗議し、撤回を申し入れた。

     先月28日の世耕氏の記者会見では、出席した記者から「経産省は自由闊達(かったつ)に民間企業とコミュニケーションし、新たなイノベーション(技術革新)を起こす役割がある。それを閉じて情報の接点を減らすことに危機感を覚える」との質問が出た。

     世耕氏は「人の出入りが多く、庁舎管理はしっかりやらせていただきたい。情報セキュリティー管理は重要だと思っている。一方で取材対応が後退するようなことは絶対にあってはならない」などと撤回の意向がないことを強調した。

     今月1日の参院予算委員会では「SNS(会員制交流サイト)ではほぼ100%賛成だった」と述べた。世耕氏はなぜこの時期に管理を強化したのかについては明確な説明をしていない。

     世耕氏はNTT広報部報道担当課長を経て参院議員に転身した。2012年から世耕氏が官房副長官を務めた第2次安倍内閣では、安倍晋三首相は日々のぶら下がり取材をやめ、従来はなかった個別のインタビューに応じる形で発信力を強めた。


    不正チェックできぬ

     国内外の情報管理に詳しい識者からは経産省の対応に厳しい意見が出ている。2009年に麻生太郎内閣の「情報保全の在り方に関する有識者会議」のメンバーだった春名幹男・早稲田大客員教授(インテリジェンス論)は「官庁そのものは国民の財産であり情報公開が原則だ。機密保持は可能な限り少なくすべきだ。施錠で外部の目が行き届かなくなればそこで私的な行為や不正が行われてもチェックができない。経済活動の施策を扱う経産省はとくに、ドアを開けて民間の情報を自ら取り入れる役所でなければならない。機密を守りたいなら、ドアを閉めるのではなく、引き出しに鍵を掛ければ済むことだ」と批判する。

     春名さんは共同通信記者時代、米国の取材経験が豊富だ。「米国務省では経産省よりはるかに高いレベルの機密保持基準が課せられているが、原則施錠はなく、日本人記者でも約束なしに取材をすることができた」と話す。経産省の取材ルールについては「取材する側の意見を聞かずにルールを決めたのは理解できない。取材の際にメモを取る職員をつけるというが、オフレコ取材のような場合にどんなルールを課すのか。事情が分からない職員を同席させて、互いに理解できる約束が守れるのか」と疑問を投げかけた。

     英国王立防衛安保問題研究所客員研究員を務めた小谷賢・日本大教授(インテリジェンス研究、危機管理学)は「秘密を扱っている部署が施錠するのは分かるが、全ての執務室でというのはやや過剰という気がする。英国の各省の庁舎でも入り口にゲートはあったが、個々の執務室に施錠はされていなかった。政府が指針を作って統一的に運用するわけでもなく、経産省だけ実施するのも疑問だ。あえていえば抑止効果、意識喚起が期待できる程度だろう」と話す。


    主な中央省庁の執務室施錠状況

    ・「全て施錠」

     経済産業省

    ・「機密性、秘匿性の高い情報を扱う部署は施錠」

     内閣府・内閣官房、外務省、防衛省、警察庁

    ・「原則施錠しない」「施錠は例外的」

     財務省、総務省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省、文部科学省、環境省、法務省

     ※各府省庁の取材への回答による

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