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原発事故から6年 巨大な負債との闘いだ

 東京電力福島第1原発の過酷事故からまもなく6年がたつ。この月日を象徴するのは、飯舘村などに一斉に出される避難指示の解除、そして2号機で初めて垣間見えた「溶融核燃料」らしきものの姿だろう。

 いつ帰れるともしれない故郷、どのような様相を呈しているのか見当もつかない原子炉内部。ついこの間までの状況を思えば、表面的には「一歩前進」かもしれない。

 しかし、冷静に考えるなら、原発事故がいかに多くのものを人々から奪ってきたか、何十年も続く復興や廃炉の道のりがいかに厳しいかを示す象徴であることは間違いない。

遠く困難な廃炉への道

 福島第1原発の構内を訪れると、廃炉作業の困難さをひしひしと感じる。全面マスクが必要なエリアは大幅に減り、労働環境は改善したとはいえ、廃炉に欠かせない難関である「溶融燃料の回収」がクリアできるめどはまったく立たない。

 サソリ型ロボットで2号機の原子炉直下まで調査する先月の試みは、通り道の堆積(たいせき)物に邪魔され、溶融燃料の状況を確認できずに終わった。投入された作業員は延べ800人超。想定外の作業で余分に被ばくする人も出た。建屋内の非常に高い放射線量が作業を阻み、建屋の周辺に近づくだけでも被ばく量が増える。

 それでも、溶融燃料の状況がわからなければ取り出し方法さえ確定できない。

 1、3号機は2号機以上に状況が悪いと考えられる。政府と東電は2021年の取り出し開始を目指すが、楽観的に過ぎる。リスクを減らしつつ作業を進めるために、ロボット開発を含め、廃炉全体の戦略や工程を抜本的に考え直す必要があるのではないか。

 原発事故が日本社会にもたらした負担は、膨れあがる事故処理費からも浮かぶ。

 経済産業省は福島第1の廃炉や賠償、除染などの費用の試算を、これまでの見積もりの2倍に当たる21・5兆円に引き上げた。ここには溶融燃料の処分費用などは含まれず、さらに増えることは間違いない。

 しかも、看過できないのは、賠償費用の一部を託送料に上乗せして広く国民から回収する新制度の構築だ。全国の老朽原発の廃炉費用の一部も同じ仕組みで回収するという。

 大手電力に加え原発事業と無関係な新電力も費用負担することになり、電力自由化の精神を大きくゆがめる。「事故対策費を含めても原発のコストは安い」と言い続けてきた政府の言い分とも矛盾する。

 広く国民負担を求めるなら、まず、こうした矛盾を認めた上で、脱原発の道筋を描き直すことが先決だ。

 事故処理に苦慮する現実を尻目に、着々と進む原発再稼働にも納得できない。

 事故後に作られた新規制基準のもとで、すでに16原発26基の安全審査が原子力規制委員会に申請された。現在稼働中なのは3基だが、6原発12基が審査に正式合格・合格見通しとなっている。合格原発には運転40年を経た老朽原発3基も含まれる。

 国民の多くが再稼働に否定的な中で、「原発依存度低下」を掲げる政府の方針との整合性はみえない。

 原発ゼロでも電力不足に陥らないことは、この6年でわかった。一方で、「地球温暖化対策に必要」という見方は根強い。

再生エネにこそ投資を

 確かに、同じだけの電力を作り出すのに、原発の代わりに化石燃料を使えば二酸化炭素は増える。それが地球温暖化に与える悪影響を無視していいというわけではない。

 ただ、現実をみれば、原発の稼働が進まなくとも、温室効果ガスの排出量は減少に転じ始めている。環境省によれば15年度の日本の温室効果ガス排出総量は05年度比で5・2%減、13年度比で6%減となった。

 日本は20年度に05年度比で3・8%減とする目標を国際公約した。ここまでは原発抜きでも目標を前倒しで達成できたわけだが、パリ協定を踏まえたより高い目標達成には、さらなる省エネや再生可能エネルギーの拡大が必要だ。

 世界のエネルギー投資も再生エネに集中するようになった。国際エネルギー機関(IEA)によれば、15年の世界の発電部門への投資総額4200億ドルのうち約2900億ドルは再生エネに対するものだ。

 太陽光発電パネルや風力タービンの価格もどんどん低下している。その結果、既存の火力発電より低コストとなるケースも増えてきた。

 苦境に陥った東芝や仏アレバの実情が示すように、先進国の原発産業は斜陽となりつつある。一方で、再生エネは成長産業となっていることがわかる。

 日本がこうした現実に目をつぶり、再生エネ・省エネより原発維持に資源を投入し続けるなら、確実に世界から取り残されるだろう。

 私たちは原発事故がもたらした巨大な負債を抱え、何十年もかけてそれを乗り越えていかなくてはならない。その闘いには支えが必要だ。

 事故を二度と繰り返さないためにも原発依存から脱することを決め、その方向に歩む。それが最も強い支えになるはずだ。

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