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津波からの復興 造成地に創生の英知を

 あの巨大地震直後に新1年生として小学校に入学したこどもたちが、もうすぐ中学生となる。

     東日本大震災の発災から6年が過ぎた11日、政府主催の追悼式が開かれ、被災した各地でも黙とうがささげられた。

     津波で父親を失った千葉陽さん(41)は、岩手県の遺族代表としてことばを述べた。「あの時からもう6年でもあり、まだ6年でもあります」と語った。

     津波で被災し、破壊された地域の復興はいま、大きな節目にある。

    ハード面重視のひずみ

     高台などへの集団移住や災害公営住宅の整備は来春までにほぼ終了する。浸水地をかさ上げする大規模な宅地造成工事にもやっとゴールがみえてきた。

     だが、住宅やインフラなどハード面の整備が進む一方で、地域や共同体をどう維持し、人口減少を食い止めるかという重い課題がのしかかっている。

     岩手・三陸沿岸の大槌(おおつち)町。津波で町人口の10分の1近い1285人が犠牲となった。庁舎にいた町長が亡くなるなど、壊滅的状況からのスタートだった。

     沿岸ではいま、土地をかさ上げする区画整理事業による新たな宅地・商業用地が姿を現している。中心市街を予定する地域も来春までにほぼ造成を終える見通しだ。

     だが、まちづくりに早くも黄信号が点灯している。造成に時間がかかりすぎたため、他地域で住宅を再建した地権者らも多いためだ。計画した人口の半数程度しか利用が見込まれないという誤算が生じている。

     あわてた町は区画整理区域に住宅を建てる人に100万円を補助する苦肉の策を打ち出した。「活性化の覚悟を示した」と平野公三町長は説明するが、すでに他区域で住宅を建てた人からは「いまさら不公平だ」と批判が起きている。

     政府の復興行政は住宅整備中心だった5年間の集中期間を終え、地域の自立支援に軸足を置いた新たな「復興・創生期間」に昨年から移行している。創造的復興を掲げて高台などへの集団移住を進めたが、時間との闘いは厳しかった。

     とりわけ、大槌のような区画整理事業は供給と需要にギャップが目立つ。かさ上げの規模が最大の岩手県陸前高田市では、4割超の32ヘクタールもの空き地が生じるおそれがでている。

     巨大な防潮堤も、資材や人件費の高騰で整備費が想定より4割も増えたとみられている。景観を一変させてまで防潮堤を築くことへの賛否をめぐり、多くの地域は住民の対立を抱えたままである。

     かさ上げや防潮堤を用いた区画整理を選んだ自治体の多くは内陸部に移住の適地が乏しいなどの事情があった。当時の選択を誤りだったと決めつけることはできないだろう。

     ただ、6年以上もプレハブ仮設住宅での避難生活を強いるなど、ハード重視型の復興は深刻なひずみを生んでいる。今回の取り組みを検証したうえで期間、コストなど実態に即した柔軟な復興、防災のあり方を議論していかねばなるまい。

     漁業など産業再生も道は険しい。三陸沿岸の多くはサケやサンマ、スルメイカなどが不漁に陥っている。大槌で地元水産業者が協力して復興に取り組む協同組合「ど真ん中・おおつち」の芳賀政和さんは「震災後、今が一番つらい」と打ち明ける。

    再起の芽を育てよう

     ただでさえ過疎が進む中で津波に襲われ、人口減少に拍車がかかる悪循環にどう立ち向かっていくのか。これからが正念場だ。

     住宅整備を終えても、国が果たす役割は大きい。生活基盤を築くうえで最も重要なのは、安定した雇用の創出である。

     復興庁は被災地の要望を聞く窓口機能から一歩踏みだし、民間、NPOなどと被災自治体をつなぐ機能をもっと積極的に果たすべきだ。

     政府は地方の人口減少を食い止めるため、地方創生の取り組みを全国で進めている。

     観光や移住支援、地域のコンパクト化など各地の自治体が蓄積したノウハウは大いに参考になる。三陸沿岸こそ地方創生のモデルと位置づけ、情報共有を進めるべきだろう。

     地域や共同体を維持するため、住民や行政によるさまざまな試みが芽を出し、育ち始めている。

     大槌町では被災地の学校を統合した小中一貫制の義務教育学校が昨年、開校した。プレハブ仮設校舎で5年を過ごしたこどもたちにとって待望の新築校舎だった。防災教育と地域学習を行う「ふるさと科」を設け、卒業までの9年間一体感を養う。

     隣接する大槌高校も生徒による研究会が復興の定点観測などに取り組んでいる。教育を通じて地域の担い手を育てる試みが広がっていることに注目したい。

     復興は地域の自主性や努力がもちろん大前提だ。だが、ビジョンを実現させるためには国や民間のさまざまな力を集めることが欠かせない。

     人口減少、高齢化など被災した沿岸地域は日本の地方が抱える課題が先行して表れた縮図でもある。復興への挑戦を国民全体で支えていく思いを新たにしたい。

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