最高裁「プライバシー侵害」立法措置必要
警察庁が全国に自粛を通達
捜査対象者の車などに全地球測位システム(GPS)端末を付けて居場所を把握する捜査の違法性が争われた刑事裁判の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・寺田逸郎長官)は15日、GPS捜査は強制捜査に当たり、裁判所の令状を取得せずに実施した捜査は刑事訴訟法に違反するとの初判断を示した。最高裁が警察の捜査手法を違法と認定するのは異例。
判決を受け、警察庁はGPS捜査を控えるよう全国の警察に通達した。最高裁の全裁判官15人全員一致の意見。GPS捜査が憲法違反かどうかの判断は示さなかったが、捜査を続けるには「立法的な措置が望ましい」と踏み込んだ。
令状取得の要件を定めた新しい法律がなければGPS捜査は事実上できなくなった。
大法廷はGPS捜査の特性を「個人の行動を継続的、網羅的に把握し、プライバシーを侵害する。機器をひそかに装着することは公権力による私的領域への侵入に当たる」と指摘。令状主義を定めた憲法35条の保障対象に「私的領域に侵入されることのない権利」が含まれるという初判断を示した上で、「GPS捜査は憲法が保障する重要な法的利益を侵害し、令状が必要な強制捜査に当たる」と認定した。
容疑者に令状を事後提示するなどという条件付きで検証令状を取得して捜査した例もあるが、大法廷は「容疑とは関係ない行動の把握を抑制することができず、原則とされる令状の事前提示もできない。適正手続きの保障の観点から問題が残る」と指摘。「これらの問題を解消する手段の選択は第1次的には立法府に委ねられている」としつつ、「刑訴法に規定された令状の発付には疑義がある」と述べ、立法措置を促した。
審理されたのは事務所荒らしなどで窃盗罪に問われた大阪府の男(45)の公判。府警は2013年5~12月、男と共犯者の車やバイク計19台にGPS端末を付けて位置情報を取得した。大法廷はGPS捜査で得られた証拠を除いても有罪は維持できるとして懲役5年6月とした1、2審判決を支持し、弁護側の上告を棄却した。【島田信幸】