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<論プラス>森友学園への国有地売却問題 戦前回帰、共感の空気=論説副委員長・二木一夫

籠池氏優遇、国は説明を

 大阪市の学校法人「森友学園」への国有地売却問題で衆参各院は23日、学園理事長の辞任を表明した籠池(かごいけ)泰典氏の証人喚問を実施する。問題が表面化し、小学校の認可申請を取り下げるまで土地取得交渉は学園の要求通りに進んだ。戦前回帰と言える学園の教育方針に共感する社会の空気が、官僚や行政機関への見えない圧力となったのだろうか。不可解な点の多い問題の背景を探った。

    「背後に政治家」圧力か

     「安倍(晋三)首相からの寄付金も入っています」。16日、大阪府豊中市の小学校建設地を訪れた参院予算委員会の視察団に籠池氏はこう話し始めた。そして「すべては国会で話す」と語った。

     学園は大阪市淀川区の住宅街で幼稚園を運営し、籠池氏は辞任以降も関わる意向だ。その教育方針の第一は「愛国心と誇りを育てる」。朝礼で園児は教育勅語を暗唱し、国歌を斉唱するのが日課だ。

     元保護者らによると「しつけが良くて安心できる幼稚園」というのが地元の評判だった。

     ところが子供を通わせてみると、園児は五箇条の御誓文を暗唱し、戦時歌謡曲などを歌う。「軍国主義的でどんな子供に育つのか心配」という思いで行事を見ていたという。

     別の保護者によると、尖閣諸島や慰安婦問題に関する新聞記事のコピーや、一部新聞を「反日」と批判するコメントが書かれた紙が連絡帳に挟まれることもあった。

     そんな籠池氏には小学校創設という長年の目標があった。2014年春の卒園式では「幼稚園だけでは教育の成果が出ない。小学校、中学校をつくっていきたい」と保護者に抱負を語った。

     籠池氏夫妻が自民党の鴻池祥肇参院議員に面会し、紙包みを渡そうとしたのが同年4月。半年後に設置認可を府に申請している。開校を急ぐ動きが本格化した頃だ。

     幼稚園は1950年に創設された。初代理事長の森友寛氏は大阪府学校法人幼稚園連合会会長も務めた。95年に亡くなり、後を継いだのが寛氏の娘の夫の籠池氏だ。奈良県職員を辞めて85年から学園理事だった。

     寛氏の頃はごく普通の幼稚園だったという。いつから戦前回帰といえるような教育を取り入れるようになったのか。

     04年秋の運動会で園児は「愛国行進曲」などの戦時歌謡曲を歌っている。歌謡曲といっても軍歌と紹介する文献は多い。ある保護者は「愛国心、愛国心とやかましい世の中だが、静かに平和に優しい心を幼いときから育ててやることが親や教育者の仕事ではないか」と思った。しかし、歌が気に入らないなら退園してほしいというのが園の姿勢だった。

     毎日新聞は戦時歌謡を幼児に歌わせることについて問題提起する記事を書いた。「自国をたたえる音楽を流してどこが悪い」「自虐視点では世の中真っ暗。哀れ」と批判的な意見が寄せられ、インターネット掲示板では幼稚園を擁護する声が続いた。

     だが、昨年からほころびも見えていた。アルバム購入を拒否して退園させられたり、子供を「犬臭い」と非難されたりしたとして保護者側が相次いで訴訟を起こした。学園側は争っているが、保護者との信頼関係を築くことは、教育機関として最も重要なことではないだろうか。

     学園のホームページには籠池氏の随筆が載っている。政治を話題にした内容が多く、安倍首相への心酔ぶりもうかがえる。

     13年1月には「元旦は平穏な気持ちで、希望を持って迎える事ができました。安倍晋三自民党政権が再登場したからに他なりません。我が国をとりまく暗雲が神風によって吹き飛ばされたような感があります」とつづっている。

     小学校の校名も「安倍晋三記念小学校」と考え、その校名で寄付を募った時期もある。そして名誉校長には安倍首相の妻昭恵氏が就任している。寄付は全国から300人以上、計画を上回る約4億円が集まった。億単位の大口寄付もあったという。

     首相夫妻の名がどのくらい影響を与えたのか。首相の地位が一法人の利益のために利用されたとすれば、安倍首相は率先して実態究明に取り組むべきだろう。

     安倍首相が国会で「私の考えに共鳴している方」と答弁したように、国家主義的な思想を持つ政治家の間では籠池氏の教育方針に理解を示す傾向があった。

     知人に頼まれて学園で講演した鴻池氏は「教育勅語を全員で暗唱し、私の思想に合うと思った」と話す。籠池氏は鴻池氏の事務所に国有地取得の協力を働きかけた。国は籠池氏の要望通りに借地契約を受け入れ、賃料も減額した。国がルールを変えてまで籠池氏を優遇したのはなぜか。国は経緯を説明する責務がある。

     認可を巡る大阪府の対応にも同じことが言える。

     「色濃い教育」「思想教育のような部分がある」。14年12月の大阪府私立学校審議会で教育内容を疑問視する意見が相次いだ。財務状況にも「計画性がない」という指摘が出た。1カ月後の臨時会でも改めて議論されたが、「こんな絵空事でうまくいくとは思えない」と厳しい意見が続出する。

     それなのに認可適当という結論が出る。府の向井正博教育長は開校に間に合わせるため判断を急いだことを認めている。府の関係者によると、籠池氏はその頃、職員らに「君らが認可しなくても別にええよ」と言って安倍首相夫妻の名前をちらつかせていた。

     第1次安倍内閣の06年12月、教育基本法が改正され、教育目標に愛国心が盛り込まれた。それに合致した教育方針を掲げる森友学園の支持層は、より厚くなったとみられる。

     小学校設立をめぐり、政治家らの関与が取りざたされる一連の騒動は、こうした時代の空気を背景に生まれたと言えるだろう。


     ■ことば

    森友学園への国有地売却問題

     学校法人「森友学園」は昨年6月、小学校建設用地として大阪府豊中市の国有地8770平方メートルを1億3400万円で購入した。評価額9億5600万円から地中のごみ撤去費用など約8億2000万円を差し引いた額で、交渉経過が不透明として野党が国会で追及している。安倍晋三首相の妻昭恵氏が名誉校長を務めていたが辞任し、首相は土地売却への関与を否定している。籠池泰典氏は憲法改正を目指す保守団体「日本会議」の元会員。

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