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岡崎 武志・評『佐野洋子 あっちのヨーコ こっちの洋子』ほか

今週の新刊

◆『佐野洋子 あっちのヨーコ こっちの洋子』佐野洋子(平凡社コロナ・ブックス/税抜き1600円)

 絵本のロングセラー『100万回生きたねこ』の作者・佐野洋子が死去して7年。エッセーの名手でもあった佐野は、同時に友だち作りの名手でもあった。

 『佐野洋子 あっちのヨーコ こっちの洋子』は、絵本の原画、銅版画、プライベートな写真を豊富に取り込むとともに、つき合いの深かった人たちの声を多く集めているのが特徴。帯にも「いつもそばに友だちがいた」とある。

 「ちょっと日にちの経ったパウンドケーキみたいに乾いた声で話す、着心地のよさそうな服を着た人だった」と江國香織。「人の悪口をいわせると、個性全開、その切り口のあざやかさに感心し、大笑いした」のは亀和田武。「おばさんは格好いいお母さんでした」は、長男の友人の声。誰もが強い印象を佐野から受けて忘れない。

 「人とめぐり逢うのも才能である。/私に何の才能がなくても、人とめぐり逢う才能があったと思う」と佐野は書く。それで十分なのだと読者は知るのだ。

◆『ビブリア古書堂の事件手帖』三上延・著(メディアワークス文庫/税抜き650円)

 あの三上延『ビブリア古書堂の事件手帖』が、本巻(第7巻)をもって、ついに完結!

 博覧強記の若き女性古書店主・栞子(しおりこ)と、本を読むのが苦手な大輔。このコンビが、古書にまつわる謎を解くシリーズは、大ベストセラーに。

 本作では、太宰治『晩年』の初版本を高く売りつける老人が登場。シェイクスピアを翻案した明治の古書を残していく。その裏側に、ビブリア古書堂の創業者である祖父の影がちらつく。栞子、そして大輔の血縁と家系を巻き込む、大きな謎が仕組まれていた。

 本シリーズの読みどころである、古書のウンチクもたっぷり。シェイクスピアの「ファースト・フォリオ」は、サザビーズのオークションで約6億円で落札、なんて度肝を抜く話もあり、古書好きを楽しませる。ついに2人が……という、シリーズ追っかけを喜ばせる結末も待っています。

 実写とアニメの映画化も決定しており、番外編、スピンオフ作品も準備中というから楽しみだ。

◆『航空から見た戦後昭和史』夫馬信一・著(原書房/税抜き2500円)

 1945年8月30日、マッカーサーがダグラスC機で厚木飛行場に降り立った。「日本の戦後は『飛行場』から始まった」。夫馬信一『航空から見た戦後昭和史』は、日本の戦後を民間航空から追う試み。国際線開設と南米移民の関係、そして空飛ぶ女性たち(エア・ガール)。東京五輪の聖火を運んだ特別機は、国産機であることが重要だった。そしてビートルズ来日。彼らが「法被」を着ていた内幕なども明かされる。驚くべきは、貴重な写真や図版の大盤振る舞い。見ても読んでもいい。

◆『「月給100円サラリーマン」の時代』岩瀬彰・著(ちくま文庫/税抜き800円)

 「腰弁」と呼ばれた時代から、会社勤めの男たちは、少ない給料で日々をやりくりし、楽しんでいた。岩瀬彰『「月給100円サラリーマン」の時代』は、戦前日本の大衆の生活を、物価、娯楽、出世などから読み解いていく。戦前には「親からの送金」「郷里の田畑の地代収入」などが、副収入であったとは知らなかった。コメの消費は現在の3倍で、コメの価格が家計を左右した。借家全盛から、郊外に家を持つ夢が生まれたのもこの頃。「普通の人」たちの原形がこの本から見えてくる。

◆『ウニはすごい バッタもすごい』本川達雄・著(中公新書/税抜き840円)

 本川達雄は『ゾウの時間 ネズミの時間』で一躍注目された動物生理学を専攻する研究者。『ウニはすごい バッタもすごい』は、さまざまな形態をした生物たちのかたち(デザイン)に着目。なぜ、あんな奇妙な姿になったのか。本書によれば、すべて進化の過程で身につけた生存戦略だという。ハチが一秒間に数百回も羽ばたけるのは、硬軟自在の「クチクラ」という素材をバネにしているから。アサリは攻撃を受けると「キャッチ筋」で殻を閉ざす等、不思議な世界が次々と飛び出す。

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岡崎武志(おかざき・たけし)

 1957年、大阪府生まれ。高校教師、雑誌編集者を経てライターに。書評を中心に執筆。主な著書に『上京する文學』『読書の腕前』など

<サンデー毎日 2017年4月2日増大号より>

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