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平均賃金で逸失利益 大阪地裁、算定1940万円

 大阪府豊中市で2015年、障害児支援施設からいなくなった重度の知的障害がある男児(当時6歳)が近くの池で遺体で見つかった事故を巡り、遺族が施設の運営会社などに約6500万円の賠償を求めた訴訟は22日、大阪地裁で和解が成立した。山田明裁判長は、男児が将来働いて得られたはずの「逸失利益」について、全労働者の平均賃金に基づき約1940万円と認定。施設側は管理責任を認め、慰謝料も含めて4500万円を支払うことになった。【三上健太郎】

    施設近く池で死亡、和解

     「働く障害者の弁護団」代表の清水建夫弁護士(東京弁護士会)によると、重度の障害児の逸失利益を平均賃金で算出した司法判断が明らかになるのは初めて。亡くなったのは疋田逞大(ひきた・ていた)ちゃん。山田裁判長は、家族から愛情を注がれた逞大ちゃんには療育環境が整っており、意思疎通の面などで順調な発達状況がうかがえた点を考慮。「将来的には一般的な就労ができた確率が高い」との判断を示し、平均賃金を逸失利益の算定根拠に取り入れた。

     逞大ちゃんは15年2月28日夕、豊中市内の障害児支援施設「結(むすび)」(閉鎖)からいなくなった。3月15日に施設から約95メートル離れた池で遺体が見つかった。

     訴状などによると、逞大ちゃんは2歳で自閉症と診断された。療育手帳で障害の程度は「重度」とされたが、母親らと意思疎通を図ろうとするなど発達状況に変化が出ていた。15年4月から支援学校に通う予定で、母親らは慣れさせる目的で施設に通わせていた。

     施設側は安全上の配慮を怠った過失を認め、逸失利益の算定が主な争点だった。施設側は「逞大ちゃんは発語がほとんどなく、将来的に健常者と同等の収入を得られる可能性はない」と主張した。

     山田裁判長は双方に和解を勧告した際、逞大ちゃんの将来的な発達の不確実性も考慮し、国の統計による平均賃金(14年当時)の8割を基礎に、生活費を差し引くなどして算定した約1940万円の逸失利益案を示した。

    健常者と同じ「大きな前進」

     「命の値段」とも言われる逸失利益。そもそも重度の障害を持った子供の逸失利益が裁判で認められた例はごくわずかで、その際の算定の基礎とされたのは最低賃金や障害年金だった。専門家は「健常者と同じ平均賃金で算定した判断は大きな前進だ」と評価する。

     札幌市内の障害者施設に通っていた重度の自閉症の少年(当時17歳)が、2005年8月にバスの乗り降りの訓練中、別の車にはねられて死亡した事故。札幌地裁であった損害賠償訴訟で、被告となった施設側と車の運転手は09年12月、最低賃金と障害年金で算定された逸失利益を支払うことで和解に応じている。

     名古屋市内の福祉施設では07年、重い知的障害があった少年(当時15歳)が階段から落ちて亡くなった。名古屋地裁でも障害年金で算出された逸失利益を遺族に支払うことで和解が成立した。

     障害者の人権問題に詳しい清水建夫弁護士は「人の命の価値は障害があっても同じ。今回、平均賃金からの2割減額は残念だが、重度障害者を取り巻く環境を改善させる契機になる」と指摘した。

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