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社説

英国のEU離脱交渉 けんか別れにならぬよう

 英国のメイ首相が、欧州連合(EU)に離脱を通告した。離脱後の新たな関係を定めるための交渉がいよいよ始まる。

     交渉は難航必至だ。期限は2年だが、欧州議会などの承認手続きに要する時間を除くと、実質1年半もなさそうである。この間に扱わねばならない分野は、通商から移民、司法、消費者保護と広範に及ぶ。しかも、両者の隔たりは極めて大きい。

     加盟国が28にまで拡大したEUだが、新規加入の交渉しか経験がない。原点となったローマ条約の締結から60周年を祝ったばかりのEUが経験する最大の試練である。

     メイ首相は、移民や紛争処理など国家主権に関わる部分では、EUに拘束されない自由を確保したい。半面、経済ではこれまでと変わらないEUとの結び付きを望んでいるようだ。英国にとって不満足な合意ならないほうがましだ、と強気である。

     だが、もし交渉半ばで決裂したり、未合意のまま期限を迎えたりする事態になれば、深刻な影響が世界に及ぶ。金融市場が混乱し、日本経済も巻き込まれるだろう。英国との結びつきが強い日本企業の経営も打撃は避けられない。

     欧州における政治の不安定化も招く恐れがある。分断や孤立を望む勢力が勢いづき、EUそのものの解体につながる可能性さえありそうだ。

     英国の離脱交渉は、加盟国政府が国民と、改めて「EUとは何か」を問う機会と捉えることもできる。欧州内で反EUの動きが広がったのも、英国の国民投票で離脱が決まったのも、EUの指導層と域内の市民との間で意識の溝が大きくなってしまったことが背景にあった。

     30カ国近い多様な国々による大所帯となった今、これまでと同じ統治の仕方でよいのか、といった問題もある。次の60年を見据え、新しいEU像を考える好機ではないか。

     英国が離脱方針を撤回する道が完全に閉ざされているわけではないことにも触れておきたい。EUの基本条約で離脱に関する第50条を起草した責任者は皮肉にも英国の外交官だったが、彼によれば、方針転換は原則、許されているという。

     けんか別れの代償は計り知れない。双方に現実的で柔軟な対応を求めたい。

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